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H-IIA 30号機の離昇を東京から観測

 ASTRO-H(ひとみ)を打ち上げたH-IIA 30号機。 前回の29号機では、関東でロケット雲が観測できたので、東京からやや期待しながら打ち上げを待っていた。
 多かった雲も消えて晴れ渡った日没直後の空で、今回はロケットそのものを観測するという機会を得た。

 (肝心のロケット雲は見られず。 雲が遠かったようだ)



 自分で撮影した動画。 HD画質で視聴しないと、最初はぼやけてよくわからない。
(急いでいたのでピントの無限遠固定を忘れている)。

iPhoneでJAXAの公式配信を聞きながら、そのシーケンスを目撃するという、面白い体験になった。


動画の途中を拡大してみたもの。

見え方は、ISSなどの可視パス観測に似ていた。 低軌道を進んでゆく、ガスをまとった小さな彗星のようでもあった。

 目視では、第一段燃焼停止を南の方角で見ることができた。  推進中はガスの雲が彗星のようにVの字に光条となって見えていたが、第一段燃焼停止のタイミングで形が変化し、移動速度を保ちながら丸く拡散して散っていくのが見えた。

(追記: 近所にある国立天文台がより細かな追尾撮影を行っていたので、そちらのほうが見応えがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=XqMXSi5yXx4
1080p画質で画面一杯に拡大して見ると、1分くらいで燃焼停止が起こり、明るい光点とやや小さい光点の2つに分離しているのが写っています。 光は太陽光の反射で生じているとすると、2段目はどっちなのか気になりますね )

なぜ綺麗に見えたのかを整理すると、
  • 打ち上げの方角が東向きだったこと。(本州から見やすい)
  • 天候: 大気が澄んでいて、雲がなかったこと(重要)。
  • 打ち上げのタイミング: 観測地では日没で、ロケットには太陽光があたっている条件。(可視パスであること)
 空が明るすぎると、昼間の金星を探すのと同じで、肉眼では場所がわからないと識別しにくい。 当時も南西の方角は西日の名残がのこっていて、発見した当初はかすかなモヤのように見え、輝点の動きから飛行機でないことに気づくまでしばらくかかった。 第一段が燃焼を停止する直前には暗い箇所まで移動してきたため、ガスの尾がはっきりと識別できた。

 30号機の飛翔経路は、静止軌道打ち上げと似ている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/060/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/11/02/1361877_11.pdf

 第一段の燃焼停止の時点で、高度311kmにまで上昇している。 静止軌道への投入とくらべると70kmほど高い。

 打ち上げ途中だけでなく、実は軌道を一周して帰ってきたASTRO-H, 小型福衛星、ロケットの第二段が可視パスで観測できるという条件でもあったようだ。 さらに第二段が軌道修正を行ったことで、軌道上でのガス噴射が観測されたらしい。 観てみたかったなぁ。

 個人的には、打ち上げのタイミングだと衛星の運用で地上局待機ばかりしていて、打ち上げを直接見に行く機会はまだ無いのだけれど、今回は夕刻の空の向こう、1000km近い遠方で軌道速度を稼いでいるロケットの姿を直接観察できて、感慨深い物があった※。

(※半分はKerbal Space Programという宇宙開発シミュレーションゲームのおかげ) 

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