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白金温度センサで簡易温度測定

白金温度センサ(RTD)は温度係数が規格で定められているので、アナログ回路を積む余裕があって、広範囲の温度を測定したいときに向いている。 
素子部がシンプルであることを除けば、ワンチップの温度センサICのほうが楽に測定できてお得なのだが、その場合電源のための配線が増えてしまう。 2線式でよいアプリケーションでは、電流駆動のみで単純化できて、NTCサーミスタのような複雑な換算も不要になるというメリットがある。

DigikeyでVishayのチップRTDを見つけて、下駄基板を作った。 データシート上では、-50℃から150℃程度まで、換算表が記載されている。 
被測定物に接着することを想定し、5mm角で、1608と3216のパターンをつなげただけのもの。 どちらかに素子をとりつけ、ハーネスを半田づけする。 基板は0.6mm厚で発注し、表裏はVIAとパターンで熱を伝えやすくしておいた。 



RTDには定電流ICによる1mAを与えて、出てきた電圧値を非反転アンプで増幅する。
素子の物理的サイズよっては、1mAも与えると自己発熱が高精度測定を邪魔するようなので、高精度測定では500μA以下に絞ると良さそう。

測定回路は自作のPIC32MXボードにつないだ。 ADCは10ビットで、2048mVの基準電圧(REF3320)を参照させる。 
簡易構成用に0.1%精度の100Ω抵抗を買っておいた。


試験として、冷却スプレーを吹きかけて応答を観察してみた。

冷却スプレーといっても、自宅にあったのはフマキラーの凍殺ジェット。
代替フロンとジメチルエーテルによる気化冷却方式で、殺虫成分は含まれていない。 回路基板の温度試験用の冷却スプレーとほぼ同じ使い方ができると思う。
入手性が高いのもポイントだ。
 普段は冷却スプレーでTCXOなどをイジメたり試験しているので、実際の温度変化が知りたくなった。

(換気徹底と、火の気には注意!)

まず、10cmほど離して素子に吹きかけると、-46℃を記録した。 製品は気温30℃から-85℃下げられるとあるので、近いところまで下げられているようだ。 
あまり近すぎたり、吹きかけすぎても冷媒が気化できずあまり温度が下がらない。 塗装のコツと似たような雰囲気


20Hzで応答を観察してみた。 
高速応答をみるなら, 細いワイヤに素子を直接半田して熱容量を下げるのが良さそうだったので、新たに用意。

モニター画面はMegunoLinkというArduino向けデスクトップ測定/制御環境で、シリアル経由のコマンド発行やボタンGUI等の作成、時間軸/2次元空間プロット等が行える教育向けソフトウェア。 
このような画面も数クリックで作れる。
簡単なモニタリングに便利なので、1万円ほどの商用ライセンスを購入して使っている。 (ホビイストライセンスは安い)
とりあえず時間軸プロットを行うだけなら、指定された定型文と一緒に数値をシリアル経由で送信する。 測定項目ごとにチャンネル名を付加しておけば、自動で個別データとしてプロットしてくれる。


今度はADIのアナログマルチプレクサによる多チャンネル測定回路を組み、
ハーネスの先で空中固定したRTD0(赤)
回路基板上のRTD1(ピンク)
回路基板上の校正用100Ω抵抗(緑)
の応答を測定している。 

電流源を一つだけにしたので、測定値にはマルチプレクサ内のオン抵抗が加味される。
測定回路の診断の意味で、100Ω抵抗を接続したchを元にオン抵抗を計測し、ソフトウェア的に除去することにしている。精度を高めるにはオン抵抗の温度係数なども考慮に入れたほうがよさそうだが、ADCの解像度的にそこまで追求していない。 高精度が必要で、基板面積が許すならば、個別に電流源を用意するべきだろう。

温度グラフは一瞬最低まで下がったあと、冷えた基板上で気化できなかった冷媒がゆっくり気化していく過程でもう一つのピークが現れている。 その後は徐々に室温に戻っていった。

数cm角のプリント基板上の素子と、ハーネスの先の素子とでは、接地面の熱容量の差が現れていた。 何の温度を測っているのかを知るのは結構難しい。

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