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スーパーキャパシタとDC-DCコンバーターの放電実験

DC-DCコンバーターが届いたので、太陽電池で充電した100FのEDLC(スーパーキャパシタ)をつかって、XBeeが連続で何時間駆動できるか簡単に実験してみた。

 条件:
 EDLC: 100F 2.5V Rubycon 秋月で購入.
 DC-DC:TPS61200 超低電圧DC-DCコンバーターモジュール (ストロベリーリナックス製)
 XBee: series2 (zigBee) 1dB lowest(1mW). 15mA current consumption
 COM: 9600bps loopback (on X-CTU) (送受信を連続して続ける設定)
 電圧はMS8209に10kΩの抵抗を介して測定。

テストベッド。 XBeeソケットのLEDがかなり電流を喰っていたので、今回は消灯させている。 

2種類のモジュール 片方が0.3Vまで下がっても動作するTPS61200
もう片方が、0.8V下限だが効率の良いAS1322A 
ストロベリーリナックス製


100FのEDLCは、安全のためメスのジャンパワイヤをはんだづけした。
こうすればショートしにくいはず。

 結果




縦が電圧 横が時間。 約85分でXBeeは動作を停止した。

DC-DCコンバーターの特性として、電圧が低下するほど、負荷電流が増大するため、EDLC電圧 =残容量 が加速度的に低下していく様子が見て取れる。
予測よりもとても短い時間しか駆動できなかった。

 もう一つ、効率が高めのコンバーターも用意した。AS1322Aを使用したモジュールは効率9割を謳い、0.8V付近が最低動作電圧となっている。上のグラフから、0.8V付近が最低動作電圧でも、おそらく駆動時間にはほとんど影響が無さそうだ。 こちらで実験してみよう。

結果

 日向に放置した太陽電池で充電していたら、耐圧を越えた3.0Vまで充電されていた。
 まだ充電管理していないので、ホントはやっちゃいけないんだけど・・・。
そのままAS1322AをXBeeにつないで放電したのが上記のグラフとなる。 横軸はX:volt 0:time(s)
 これじゃTPS61200と比較しにくい。  過充電の結果130分も動いた。 同じ容量なら、電圧の差がそのまま駆動時間に影響するのがお分かりいただけただろうか。 

 TPS61200と同じ2.6V付近から比較したものが下記のグラフとなる。


 これを見ると、AS1322Aのグラフでは、後半がなだらかになっているのが一目瞭然。最終電圧はTPS61200が0.5V AS1322Aが0.6V 程度だった。 

 意外にもおまけで買った高効率の方が粘るという結果になった。
 TPS61200にくらべ、AS1322Aは後半の電圧低下が鈍く、粘っていた印象がある。

 低電圧で大電流をとりだせる太陽電池からエネルギーを得るのが、 TPS61200の使い方なようだ。

スーパーキャパシタの容量を使い切る方法としてDCDCは有効だが、昇圧しているのでどうしてもノイズが出てしまう。 電圧は一定でも、取り出せる電流は刻々と変化するため、出力の限界点ではGPSなどが測位できなくなった。 XBeeは最後までループバックテストができていたものの、距離1m程度の話なので、後半は通信距離が落ちている可能性が高い。フィルタを組んで影響を抑えるのと、電流が必要な機器、RF関係のモジュールはDCDCの効率が落ちない範囲のみで使うといった工夫が要るだろう。

 太陽電池を使う場合、普通は降圧する設計にするので、小型の太陽電池を昇圧しようと思っている場合は、出力電圧と効率の関係、その結果発生するノイズを考慮する必要がありそうだ。

キャパシタの容量は、 Q=F(V1^2 - V2^2)/2 で示され、1/3600を掛けてWhに換算する。
(F=ファラド、V1(最大電圧)、V2(最低電圧))

このキャパシタは2.5V100Fなので、0Vまで使い切ったとしても86mW/h 似たような容量の電池を探すと、CR927という3V 30mAhの豆粒程度のボタン電池と同じということになる。 自然放電も無視できないため、電池として期待すると残念だけど、充放電で劣化しにくい、瞬間的に大電流をとりだせる、使用できる温度範囲の広さといった物理電池としての特性は、バッテリのピーク電流補助や、厳しい環境で稼働するロボットの電源バッファとしてはとても魅力的だ。

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