気象衛星からの画像、BS放送、GPSといった軌道の巨人たちのサービスが浸透し、それがあまりにも当たり前なので、逆に衛星というものはほとんど意識されずに暮らしていける現在。
地上のRFネットワークが発達して、電波のやりとりが人々の日常から非可視化されつつある世の中で、ここはひとつ星たちのささやきを聞いてみよう。
JAMSATの500円アンテナを使った環境でどこまで出来るかが主題です。
500円アンテナ http://www.jamsat.or.jp/features/cheapyagi/index.html
<無線機>
CubeSatやアマチュア衛星の電波を受信するためには、アマチュア無線の設備が必要になってくる。 無線機がネックだが、免許が無くても扱える広帯域受信機が市販されている。アマチュア衛星はだいたい135MHzから430MHz帯でさえずっているので、この帯域が聞こえるものなら大丈夫。
ここまで興味を持っていたら間違いなく免許を取る気配。筆者も勉強中です。
お手軽で人気な機種だとIC-R6といったものからたくさんある。 ただし低価格の受信機、あるいはトランシーバーではCWを受信できない機種が多い。その場合、聞けるのはFM衛星に絞られてくる。 CWが聞ける機種だと、大学衛星、とくにCubeSatのビーコンが聞こえるので結構楽しい。 FM運用と違って、衛星が可視範囲にいれば受信が期待できる。
私はDJ-X11を使用している。若干高いがPCに接続してSDRソフトを使うとCWとSSBを受信できる。 初めての運用で使った無線機がPC上でSDRを使う高級受信機だったので、同じことが簡易ながらできてしまうのは便利でうれしい。
<アンテナ>
通称"500円アンテナ"を自作。 アンテナの記事はこちら。 これを野外か、自宅の屋根に設置できると理想的だが、現実にはアパートなので、物干し竿に金具を使って固定した。 受信する間だけ外に出す。
・・・漂うネタの空気。
屋根以上の高さを稼げず、受信する方角が限られてしまうのがややネック。
アマチュア衛星向けの本では、八木アンテナを固定する場合、
・仰角を固定するなら20~30度
・方位角はローテーターをつける、なければ東北東か西南西に向ける。
とある。 ローテーターを開発出来ていないので、ここは固定運用で臨む。
自作八木アンテナなので、素子数が少ないとどうなるか試してみると面白い。素子を減らすほど指向性が弱くなり、ロッドアンテナのように全方位から電波を拾うようになる。 衛星運用している地上局の場合、この素子が16とかそれ以上になり、ローテーターによる精密な追尾で確実な受信、送信を行っている。
受信の際、軌道予測ソフトでの受信支援があると無いとではだいぶ違う。 Orbitronなどの衛星軌道予測ソフトで衛星の通過時刻、最大高度などを調べられる。 また、周波数のドップラーシフトも計算し、リアルタイムで予測値を表示してくれる。手動で合わせる時に心強い。
固定リグ機には、こうしたソフトと連携して自動で周波数を合わせられるものもある。
Orbitron |
いままでに紹介したような設備で、受信してみた。
2010年末現在、CubeSatなら日本勢だけでXI、PRISM、Cute、SEEDS、KKS-1、STARSの電波を捉えることができる。 ほかにも海外勢、アマチュア衛星がある。 沢山あるがどれが現在サービス中かどうかは結構カオスで、半分以上は軌道にあるが停波していたりする。 また新しい衛星も随時上がっているので、随時調べてみてほしい。
Orbitronの画面で、レーダーサイトになっているのが上空の衛星一覧なので、ここに見えている衛星を追いかけてみる。 CWで方位の条件が良いと、仰角が数度であっても信号を受信することが出来た。
大学衛星では、FM運用は大学の地上局がアップリンクしたコマンドにより不定期に行われるので、いつも聞けるとは限らない。 大学衛星のFMダウンリンクを捉えた例が以下のものとなる。(KG-SDR上にて)
さすがに感度が不足しているらしく、アンテナを工夫するか、プリアンプをつけないとデコードは難しそう。
アマチュア衛星の場合は、休日に聞いてみるととても賑やかな音声会話が聞こえる。衛星が搭載するレピーターを使った会話が行われている。
きっとこんな感じで |
低価格ハンディ機と自作八木アンテナでどこまで出来るか調べてみたが、結構聞こえるなー、と。
目指すは無人気象台ロボットと無人受信局という壮大な出オチ計画。