2015/11/26

H-IIAの夜光雲?

11月24日の15時50分、種子島からH-IIA 29号機が打ち上げられた。
その後、日没後1時間の関東で不思議な雲を見たので、方位や距離を調べてみた。

17:23  東京都 調布市  RX100M3  1/4秒 ISO800 焦点距離21.4mm
11月24日 17時20分ごろ、作業が一段落したので、見晴らしの良い場所から西の空を見ると、日没後の南西の方角に普段とは違う雲が見えた。

 夕焼けの名残りで僅かに赤い西の空に、輝く白い帯状の雲があった。 一番白い場所では、彩雲のような細かい虹色の模様が見える。
けっこう遠くまで広がっているらしく、尾は暗くなりながらも、南まで延びているようだった。

その時は、珍しい飛行機雲かなと思い、カメラをとりに戻って、何枚か手持ち撮影した。 風が冷たく、良いカメラでの撮影はそれきりになってしまった。

17:30 iPhone6s 1/15秒 ISO2000  トリミング済み

17時30分 一旦カメラの写真を吸い出しに戻ったあと、もう一度、空を確認しに戻った。夕焼けの光が消えて、暗くなってからも、青白っぽい雲はかろうじて観察できた。

関東圏の広範囲で、この雲は目撃されていたようで、たくさんの人が写真をアップロードしていた。
http://togetter.com/li/904464

 24日の日没時刻は4時半ごろなので、5時半に輝いていた雲はかなり高高度であると思われる。
ネットで検索しながら写真を見返すと、 夜光雲と特徴が似ている。

 夜光雲そのものは、高緯度で見られる珍しい現象なようで、 高度80km付近の中間圏で、氷の結晶を主成分とした雲が発生し、日没後や日の出前の上空で、太陽光を反射して白く輝いて見える。

 日常的な微小な流星塵や火山の噴出物などが核となり、氷の結晶に成長するらしい。

ロケットの打ち上げが人工的に夜光雲のような発光雲を引き起こす事も知られている。 となると、H-IIAの打ち上げが関係していてもおかしくなさそう。 ロケットの排気によって氷の結晶ができたのだろうか。

ロケットが高層大気で引き起こす現象は神秘的に見えるものが多くて、探すとたくさん見つかる。
いずれも観測地では日没後や夜間で、ロケットの飛翔経路には日照があるというタイミングだ。

H-IIAロケットの飛翔経路

ちょっと古い資料だが、29号機と同じく、204型で、静止軌道へ投入された11号機の飛翔データ(kml形式)が公開されている。 GoogleEarthで読み込むと、グリグリ動かして確認できる。

第一段までのシーケンスは、両者でほぼ同じだ。

   29号機の打ち上げ計画書 http://www.jaxa.jp/press/2015/09/files/20150918_h2af29.pdf
   11号機のデータ、kmlファイルの場所 http://www.jaxa.jp/countdown/f11/


H-IIA 11号機のロケット飛翔経路データ
 飛翔経路によれば、H-IIAの経路は雲と同じ方角から始まっている。 山の近くで、だいたい90km程度の高度がある。

方位の特定

方位については、ランドマークとなる地形や建物から、おおよそのものを特定した。
その結果が、以下のGoogleEarthで表示した線となる。
線を延長すると、おおよそ種子島の方角と一致する。
ただ、画面左側にも帯は続いているので、その先端についてはもっと太平洋側に張り出しているのかもしれない。




方位とH-IIAの飛翔経路を表示させてみた。 それぞれのイベント時の高度を付け加えている。

仰角の特定


仰角については、星を使う。
写真にはかすかだが、恒星がいくつか写っていた。 ノイズも多いので、手ブレしていたカットでぶれた星像があったものを選んでプロットし、Stellariumというフリーソフトで同じ方角の星図を表示して、Photoshopで簡易的に合成してみた。



写真だと70mm換算で撮影していたので大きく見えるけど、実際はそれほど大きくない。 写真で輝いていた部分は、仰角にして5°から7°、 方位角にして25~30°程度の範囲に広がっていたようだ。

その時点で日照がある高度と地点


AGIのSTKという航空宇宙用の解析ツール(フリー版)を使い、単純な検証として、当時の時刻で太陽が見える緯度経度と高度を強引にあたってみた。

方位で設定した方位Aと方位Cの線の上にある高度を見てみることにする。
写真から、方位Aの雲は仰角7°、方位Cは仰角4°となる高さにあると仮定して、
仰角の延長線上で、かつその高度で日照がある場所を探す。

今回は1地点のデータなのと、雲が見えなくなるまで観測したわけではないので、雲の高度における日没が正確にはわからない。
今回は、写真の時刻から10分程度日照がある範囲なら良しとする。

おおよその地点を設定。 数値は各ポイントの高度と観測点からの距離、仰角

方位Aでは、四国の室戸岬のあたりに1Aを、四国と紀伊半島の中間に2Aというものを設定した。 それぞれ観測点からは同じ角度に見える高度に設定。 どちらも太陽が見えるが、当然1Aのほうが日照時間が長い。

方位Cでは、室戸岬の南の海上に1Cを設定してみた。 仰角が低いため、同じ高度でも遠くになる。


位置関係
当時の時刻(UTC)のとき、1Cから太陽を見たところ。

 仰角と日照高度の情報によれば、四国沖~紀伊半島沖の高度80km付近に雲が存在していたことになる。
中間圏で雲ができる高度の条件は満たしていそうだ。 

座標については、日没時刻の解釈で前後に誤差が大きい。
四国や和歌山などではほぼ真上に見えたはずだけど、衛星画像や過去の予報では曇りだったようだ。 単純に観測できなかったのだろうか。

それにしても、あの雲が種子島から打ち上げられたH-IIAがもたらしたものだとすると、遠く関東でロケットの引き起こした現象を観測することができたということで、なかなか感慨深い。

追記

ひまわり8号の画像から分析している方のブログ記事

ひまわり8から見たロケット打ち上げ ~ H-IIA F29のロケット雲を宇宙から見よう!

http://blog.syo-ko.com/?eid=2328


ロケット雲の発生と、流れていった方角が写真の雲と一致している様子。
雲については、固体ロケットのSRBが発生源であるようだ。

2015/11/06

白金温度センサ

白金温度センサは測熱抵抗素子(RTD)の一種。 測定できる温度レンジが広いこと、かつ温度特性が広範囲で直線的なので、高精度な測定に用いられる。
JIS規格でPt100と呼ばれ、0度で100Ωを示すように調整されている。

普通のサーミスタと比べるとだいぶ値段が張るけれど、秋月で購入してみた。 PTFA101B000というもの。
-50~600℃の測定レンジを持つ。 もう一種類あったけど、そちらのほうが小さくて安い。

白金電極のパターンが見える

そのままデジタルマルチメータに接続して、抵抗測定モードで計測すると、気温に比例した抵抗値が表示されていた。 測定レンジ的には、はんだこてにセラミックのセンサ部を当てても大丈夫
氷水で校正すれば、かなり正確な値を示すようだ。


測定回路としては、1mAまたはそれ以下の定電流で駆動するとある。 手元のマルチメータだと600Ωレンジでは0.57mAで測定していた。 これ以上だと自己発熱が大きくなってしまう。

とりあえず、部品箱の電流源ICとしてLT3092があった。抵抗をセットすれば、0.5~200mA出力の電流源になる。 これも秋月にあったもの。  センサ用としてはややパワフルすぎるかもしれない。


簡単な確認ということで、直読しやすいように1mAで駆動することにする。 SET端子からは10μAが出力されているので、OUT端子の抵抗値はそれを加算して1mA程度になるように抵抗値を選ぶ必要があった。

今回は、手持ちの10kΩと、100Ω抵抗から、101Ωに近いものを選別した。
 抵抗値の誤差もあり、現実には1.02mA程度の出力となった。 可変抵抗にすると良いかもしれない。


オークションで入手した電源装置。 

まだ誤差を追い込んでる途中だが、出力電圧はmVをΩに換算すれば、そのまま読める。
OPアンプで増幅し、LPFを組んでADCに入力すると良さそうだ。

 RTD向けの電流源としては、REF200という外付け部品無しで100μA出力を2つ持つカレントリファレンスがある。 組み合わせで400μAまで簡単に生成できる。 RTD用の回路例も載っていて、こちらのほうが簡単に組めそうだ。 (これも結構単価が高い)

配線を延長する場合は、3線接続やケルビン接続で配線抵抗をキャンセルするのが良いらしい。
Digikeyなどを漁ると、PT1000という1kΩの高抵抗なタイプもあり、PT100よりも高精度の測定に向いていそうだ。

TIによるRTD回路のアプリケーションノート http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja306/jaja306.pdf