2012/04/30

太陽電池とキャパシタふたたび


計画凍結状態だった観測ノードの回路実験ふたたび。 まだ治具作っただけですが。

120FのEDLC(電気二重層キャパシタ)と1Wの太陽電池(2V 500mA)を日向に放置してみたときの写真。 10分くらいで満充電状態。今回は太陽電池の最適動作点とEDLCの耐圧が近いので、逆流防止ダイオード以外は挟んでいない。
 このままニッケル水素充電池の単セルを充電するようにするとちょうどよさそうな気がする。ちょっと発電しすぎなので、セル面積を減らすか、負荷の消費を増やさないと問題になってくる。
 
FETはEDLC、電池の充電回路の切り離しと、太陽電池のダミーロード(LED?)等の負荷切り変えにつけるとよさそうだ。ここはマイコンの介入は無しにする。



今回の試験用治具の構成。  FemtoCubeの回路をスロットインしている。
DCDCコンバータで3.3Vを生成して駆動している。 気圧、気温、キャパシタの電圧をモニタできる。

Xbeeを除くと、センサ駆動時以外はスリープしていて、0.1mA程度しか消費しないので、今回の電源回路はだいぶ過剰だ。 JPEGカメラとかも駆動できるだろう。


おまけ。 ダイセンのモーターをキャパシタで回したところ。定格3~6Vなので、2V以下だとゆっくり。
ただし30分くらいは平気で回っている。 ロスの少ない低電圧モーターなら、もっと回りそう。

部品 
1W太陽電池(OptoSupply製) http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-05205/
120Fスーパーキャパシタ   http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-05279/


2012/04/23

DSO QUADのサードパーティ製アプリ

オープンソースなオシロ、DSO Quadを去年の8月に入手した。 出た当初はバグも多かったけど、最近はファームウェアアップデートを繰り返したからか、だいぶ改善したとおもう。 なんだかんだで趣味の作業には使っている。

最近SeedStudioのWikiを回って見つけたのだが、DSO Quad用に書かれたサードパーティのファームウェアがでてきたらしい。
DSO Nanoでは使い勝手を改良したファームウェアというのがあるとは聞いていたけど、Quadではどうだろうか。

そのあたりが書かれた記事


DSO Quad For Dummies


http://neophob.com/2012/03/dso-quad-for-dummies/

そもそも起動時に押すボタンによって4種類までのアプリケーションが切り替えられるらしい。1種類はオシロとしてのアプリで、残り3つが空き状態なのだろう。
一番左端のボタンはUSB経由のブートローダーだが、横の3つはオリジナルのアプリの起動に使われる。 この記事にはMacでアップデートを行うとFlash領域が埋まってヤバイとあるので、窓かLinuxを使うほうがいいみたい。

ためしに何も入れてない状態で切り替えてみると、●ボタンにはなにか入っている・・・。GUIが違う以外は見たところオリジナルと同じファームのようだが… ほかの■と▲2つは何も入っていなかった。(起動ロゴのままブザー音が永遠になり続ける)

せっかくなので上の記事で紹介されていた周波数特性計測とロジアナを入れてみた。 本来のオシロスコープのファームウェアもサードパーティ版があるが、それは本体のスロット1(オリジナルのファーム)を書き換える。
以下2つはオリジナルファームとは違うスロットに格納される。ブートローダーにそのまま放り込んで大丈夫らしい。(どのスロットを使うかはアプリ次第みたいだが)

Essential scrap

周波数特性 http://essentialscrap.com/dsoquad/freq.html  slot4
4chロジアナ http://essentialscrap.com/dsoquad/logic.html slot3

(あの謎のプリセットアプリはロジアナに上書きされてしまった)

CR回路の周波数特性(その場にあった適当な抵抗とコンデンサで)


AquesTalk用のLPF回路の周波数特性を測ってみたくなった。 


ロジアナの画面(テスト信号は9600bpsのUART)



ジョグスイッチで計測もできた。 簡単な確認にはなかなか便利。 機能が増えるとワクワクする。 

ほかにも応用法はいろいろありそう。


2013/12 追記

これとは別のカスタムファームウェアが公開されています。オシロの機能がだいぶ使いやすいです。
https://github.com/gabonator/DS203



2012/04/06

商用衛星と組み込み通信モジュールとCubeSat



 商用無線でデータを得る経路例として、カバーエリアの広い順に並べると
・人工衛星
・携帯電話のネットワーク(3G,PHS)
・無線LAN
・近接無線(Zigbee/BLE)
となる。

 3Gまでは結構一般的になりつつあるけれど、人工衛星に自分で作ったロボットやセンサモジュールをつなぐ手段はあるのだろうか。

 組み込み機器で衛星サービスを利用するにはいくつかの選択肢があるので、代表的なものをまとめてみた。ただしホビイスト向けとは言えなさそう…。
 
通信衛星のコンステレーション

多数の人工衛星を配置することをコンステレーションと呼ぶ。 (コンステレーション=星座)

地球は球体なので、任意の地上の1点から少なくとも1機が上空に見えているために必要な衛星の数は、軌道高度によって変わる。
わかりやすいのは、地上から見かけ上いつも同じ場所に見える静止軌道だ。極域を除いて、理論上は3機の衛星だけで地球をカバーすることができる。

実際の静止軌道は、各国の通信、放送、気象観測といった大型衛星がたくさん並んでいる。
可視範囲が広いことの利点は気象観測や国際通信に生かされている。
 国ごとの放送や通信では、いつも同じ位置に見えるという空間的な利点を活かし、電波資源管理の観点から、複数の指向性アンテナを搭載し、特定地域のみに電波を絞ることで、サービスエリアを限定している。

 やや低くなって、高度数万kmの中軌道になると、おなじみのGPS衛星のコンステレーションが覆っている。 GPSは高度2万kmの同期軌道を等間隔に周回しており、30機前後の衛星で運用されている。 測位精度を維持するには、最低でも4つの衛星が地上から見えている必要があるためだ。


 

GPSは衛星数が増えれば精度が上がるので、静止軌道にもSBASという信号を送信している衛星が存在する。 ただ、高緯度地域では静止衛星の仰角が下がり、障害物に隠されてしまう。
日本では準天頂衛星をコンステレーションし、GPS信号を補強する計画が進められている。

さらに軌道を下げるにつれて、衛星から見渡せる範囲は狭まる。そのため、低軌道で地球を覆うには数百機以上必要になるというのは感覚的にもわかる。

 低軌道衛星コンステレーションが魅力的とされるのは、地表に近いため、光学観測の規模や電波出力が少なくて済むこと、通信距離遅延が少ない点となる。
衛星そのものは小型化、低コスト化が進んでいるが、実際には、衛星群を打ち上げるコスト、運用するコストなど、かなり大規模な投資が必要になってくる。


 1990年代に規制緩和もあって、低軌道通信衛星のベンチャーが多数誕生したが、2000年代にほとんどが消えていった。

 Youtubeを検索すれば、そうした通信衛星コンステレーションの軌道シミュレーション動画をたくさん見つけることができる。 

以下は840機もの衛星で地球を覆い、高速インターネット回線を提供しようとしたテレデシック計画のシミュレーション。衛星間通信による地上から独立したインターネット回線を構築すると計画だった。

 

途中で計画が見直され、中軌道の288機体制とされた。その場合のシミュレーション。


 同じく、衛星間通信で独自の衛星携帯回線網を築いているのがイリジウムだ。
こちらは紆余曲折あったものの、衛星通信の淘汰の波をなんとか乗り越えた。


そのほかに、低速のパケット通信インフラという意味では、遠隔テレメトリや輸送監視に特化したOrbCommなどがある。

だいぶコンステレーションの話が延びてしまった…。

低軌道で現在も運用されている商業通信衛星サービスで、シリアル通信可能な小型モデムが見つけられたものを挙げてみる。

Iridium

衛星電話サービス。 データ通信用のモデムも存在する。
モジュールは小さく、一度に短いメッセージを送受信できる。
接続プランを見てみると、結構パケット代が掛かりそう。
どこからでも短いメッセージをやり取りできるので、Seagliderなどの海洋無人探査機などにも採用されている。

OrbComm

産業向けのテレメトリサービス。
VHF帯を送受信に使う。データ受信サービスが提供されていて、船舶やトラック、建設現場の重機の追跡管理などに使われている。
http://www.orbcomm.com/index.htm

SPOT Connect


高度1400kmにあるGlobalstar衛星のコンステレーションを使うアップリンクサービス。


送信機本体は手のひらサイズ。乾電池2本で動作するらしい。

緊急通報ボタンや登録した固定メッセージの送信機能を持つ。GPS座標も送れる。
スマートフォンとBluetooth接続を行い、アプリで編集したメッセージを送る機能を持つ。
 アップリンクのみ、遅れるのは短いメッセージだけではあるが、個人用途に展開されている。

ただし、人の住む主要大陸以外、太平洋の真ん中とかはエリア外なので、その点は全球をカバーするIridiumと比べる際の注意点となる。 あと、日本はエリア外になっている。 電波法上はどうなんだろう…
 
 Sparkfunではシールドが出たようなので、バルーンや観測ロケットの観測装置に組み込んで、位置情報付きテレメトリとして使う例があった。

SatUplink Shield http://www.sparkfun.com/products/11088

衛星通信対応GPSモジュール SPOT Connect、ケータイ圏外でもSOS可能 /engadget日本版

 http://japanese.engadget.com/2011/01/05/spot-connect/ 

SPOT Connect
 http://www.findmespot.com/en/index.php


SPOT の simplex transmitter http://www.globalstar.com/shop/index.php?main_page=product_info&cPath=22&products_id=78

エリア http://www.globalstar.com/en/index.php?cid=106&sidenav=25

SPOT Hacking http://natrium42.com/projects/spot/


日本で使えるのかはちょっと不明だけれど、アメリカでは結構遊んでいる人がいる様子。


CubeSatの衛星間通信

地上のセンサと同じくらいの規模で、かつ電波通信を必要とするセンサーとみなすと、超小型衛星も同じカテゴリにあると思う。

CubeSatなど、低軌道衛星の問題としては、地上-衛星間のリンク時間が短く、一日の可視時間が限られていること、電力が限られていることなどが挙げられる。

低軌道衛星に中継衛星が存在すると、通信頻度が増加し、 軌道上どこでも通信ができそうだ。

(以下追記)

IridiumとOrbcommのモデムを搭載したNASAのCubeSatはISS相乗りで放出されたことがある。 http://en.wikipedia.org/wiki/TechEdSat

 しかし、軌道上での通信モデムの電波送信の認可が下りないまま、打ち上げとなってしまった。過去にISM帯で運用を行おうとしたCubeSatがあったが、認可を取った国の上空でしか運用できなかった。
  人工衛星は、国際的にも衛星が利用できる周波数が決められており、商業衛星と衛星間通信を行うのは、ルール上問題がある。  専用の衛星間通信機を作るしかなさそうだが…。

参考文献

テレデシック(wikipedia) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%87%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF

「人工衛星と宇宙探査機(宇宙工学シリーズ3)」 (コロナ社) 4.2節 衛星コンステレーション