2014/01/26

新PIC32

 PIC32MZという新製品が出ています。 (製品出荷は14年春頃のようですが)

 MIPSコアが M4K からM14kになり、200MHz動作で330DMIPSとあります。
個人的に最近MIPSアーキテクチャに興味があるので、ヘネパタ本読もうと思って色々な文献を漁っていました。 ここ10年で世の中はすっかりARMになってしまいましたが…。
 
 コアにはL1キャッシュが内蔵され、DSPなどが統合されています。周辺回路もUSB2.0ハイスピード対応や、12bit 28MspsのADC、高速FlashメモリIFなどなど。IoT向けに暗号エンジン内蔵モデルもラインナップされています。

 てんこ盛りな割に、PIC32MZは64/100/144ピンQFPパッケージ(ただし0.4mmピッチ)が用意されていて、ギリギリ手付けも可能というのがDIY寄りで面白そうな点です。

データシートのDC特性の欄を読むと、L1キャッシュが消費電力の20%を占めていることがわかったりします。(デフォルトではキャッシュ無効)


年末発注してあったPIMを入手したので早速試してみました。クロック源はクリスタルではなく、24MHzのOSC(MEMS?)が実装されていました。

サンプルプロジェクトは、microchipのPIC32用 Harmonyフレームワーク(β版)をインストールして、exampleを元に試しています。
 クロックの設定は資料のConfiguration-Bit Settingsを参考にしています。 

 LチカついでにGPIOの速度を見てみようと思い、何MHzでHigh/Lowできるか確かめてみたところ、20MHz出ているのをロジアナで確認しました。
 FreeRTOSの導入まではフレームワークのサンプルをECH100用に修正して動作確認できています。

ROM領域は広い
これだけRAMがあると、なんでも出来そうですね。
なおエラッタリストを眺めると手元のA3リビジョンは目玉となる機能の幾つかが使用不能だったり、I2Cがややこしいことになっていたり、スリープモードが怪しかったりするので注意が必要です。

 半年気付かなかったのですが、PIC32MXも新しいデバイスが追加されてます。
3XX,4XXシリーズに新製品が追加されていて、

・クロックが100MHzに上がり、RAMも64kBまで増加
・Peripheral Pin Select(PPS)、I2S、CTMUが追加。UARTのch数増加
遅れて登場した小ピンのPIC32MX1XX/2XXと同じ特徴を備えて、追加と改良が入っています。 

 特にPPSは、64ピンパッケージだとシリアル出力でUART,SPI,I2Cがchが重複するため、取り出せない組み合わせが多くもったいなかったので便利そうです。 

4月追記
 28pDIPパッケージでおなじみの1XX、2XXにも、RAM64kB品が追加されていました。
 新しいデータシートが出ていますね。
  http://ww1.microchip.com/downloads/en/DeviceDoc/60001168F.pdf


参考

PIC32 http://www.microchip.com/pagehandler/en-us/family/32bit/

MIPS microAptivコア採用で性能3倍に、マイクロチップの新型32ビットMCU
http://ednjapan.com/edn/articles/1311/22/news065.html

マイクロプロセッサ・アーキテクチャ入門
http://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/33/33311.htm

MIPS M4k http://www.imgtec.com/jp/mips/mips-m4k-hardip.asp
MIPS M14k http://www.imgtec.com/jp/mips/mips-32-m14k.asp
 

電波時計モジュール(1) JJYブザー


aitendoの電波時計モジュールを入手してみた。 
 http://www.aitendo.com/product/5029

40/60kHzのシングルバンド版と、デュアルバンド版が取り扱われている。今回は40kHz版を入手。

 モジュールはMAS6180Bという受信ICがコアで、このICは時刻電波信号を増幅/復調し、コンパレータでバイナリ出力する。 JJYのタイムコードをそのまま出力するので、時刻データを取り出すにはデコードすることになるようだ。

モジュールのデータシート
http://www.mas-oy.com/uploads/Data%20sheets/DAEV6181B1COB.pdf
IC(MAS6180B)
http://www.mas-oy.com/uploads/Data%20sheets/da6180B.pdf

基板から出ている端子には短いシルク印刷がある。

 V  :電源
 G  :GND
 P2 :制御ピン2
 T   :パルス出力
 P1 :制御ピン1

 P1とP2の論理で、モジュールの電源断、40/60kHz切り替えができる。
 実装されているのが40kHzだけなので、この場合2つともGNDに落とす。

 ネットで見つけたモジュールのデータシートと比べると実物は色々実装が変わっていた。
 AON というAGCの制御ピンがあるが、ピンヘッダ配列には出されていなかった。

 とりあえず、信号出力をトランジスタを介して自発振ブザーに繋ぎ、タイムコードを耳で聞こえるようにした。 電波時計人間が目指せそうだ。 
 PC付近はノイズのせいか1Hz以上の断続音になり壊滅状態で、窓際じゃないと難しそうな様子だった。
 見晴らしの良い場所だと1Hzごとの信号が聞こえる。

JJYのタイムコード
http://jjy.nict.go.jp/jjy/trans/#item1

消費電流も動作時で数十μA程度しかないとあるので、電力が限られていて、屋外でGPSが必要ない用途には良いかも。

2014/01/24

SDRで衛星追尾するときに嵌った点

お正月は430M帯QFHアンテナの3代目を作り(前記事)、PC上のSDR#で衛星のCW信号をずっと追いかけてました。アンテナはそんなに問題なかったものの、ソフトウェアの設定で最初手こずっていたので少しまとめました。
PRISMのビーコンをドップラーシフト補正でとらえたもの。 アンテナは秋月のモービルアンテナ
SDRはハードウェアも安価で、USBでPCにつなぐだけなので入門しやすいですが、ドライバ設定や個体差のキャリブレーション、受信設定についてはユーザー任せです。
 ソフトウェアも自由度が高くアップデートが頻繁にあるので、できれば手元には問題切り分けのためにちゃんとした無線機/広帯域受信機が一台あって、慣れ親しんだほうがやりやすいでしょう。 
 
今回使用した機材
・Funcube Dongle pro+
・RTL-SDR (2種類)
・DJ-X11(確認用)

アンテナ
・145/430モノポールアンテナ 秋月
・自作430M帯QFHアンテナ

復調
・SDR# v1.0.0.1145

FCDやRTL-SDRを認識し、復調できるソフトウェアは幾つか種類がありますが、最近はもっぱらSDR#を使っています。必要な機能が揃っていて導入も簡単です。 プラグインでDDE経由のドップラーシフト補正もできます。 入れるときはStable版ではなくDev版の最新バージョンにしましょう。 周波数合わせがマウスだけで出来ます。 
 最新開発版を追いかけてインストールしていると、結構挙動が変わって混乱します。 インストール不要なので、設定確認のために古い環境も残しておきましょう。

ドングル側のドライバ設定


 ここでは周波数校正値の設定ゲイン設定を確認します。 

 SDR#では、ドングルを接続し選択した状態でConfigureというボタンを押すと、各種ドングル向けのドライバ画面が出てきます。

 とりあえずゲイン設定です。FCDのIF Gainの欄では最大で30~50dBまで設定できます。 最初はできるだけ上げていたのですが、これは失敗でした。 ノイズフロアも上がってしまい、信号が埋もれてしまっていました。 混信もあり、過大入力になって信号レベルが大変動するので良いことがなかったです。
 
 私の環境では固定の全方位アンテナを使っていますが、Funcube Dongle Pro+ではIFゲインを25~30程度にすることで、衛星の信号をよく捉えられるようになりました。 秋月アンテナでも十分な感度があります。
 
 衛星だと地上局設備のような多素子アンテナにつないだ場合はアンテナゲインが大きいので、LNAも切って、ゲイン設定はできるだけ下げたほうが良さそうです。

 信号が見えたらハードウェアの周波数校正をします。設定周波数はハードウェア毎に個体差があり、実際に基準となる周波数を受信してみて合わせるのが確実です。 たいてい数kHzずれています。 衛星の信号はドップラーシフトも加わるため、ずれていると発見が難しくなります。

Config画面でppmを入力して合わせます。 手元のFuncubeDongle Pro+は0~3ppm、RTL-SDRは製品差が大きく、25~40ppm付近でした。

 RTLSDRの場合、水晶の温度ドリフトの影響が大きいという報告があり、せっかく合わせても自己発熱でずれていっていしまうようです。 SGにつないでCWで聞いてみると、時間とともに周波数がずれていくのが直接観察出来ます。
 改造例としてドリフトの少ない水晶や、TCXO(温度補償型)に換装する例もあります。

 その点では、FCD Pro+は少し高いですがTCXO搭載であり、ドライバ不要で使えるのでハードルが低いです。 観測帯域が192kHzで十分であればおすすめです (アマチュア衛星には十分です)。

Funcube Dongle Pro+ のconfig画面
RTL-SDRのConfig画面 AGC設定が多い
バージョンを移したら見直しと設定しなおしが必要になります。
 あと、USBポートを変えたりしてドライバが再インストールされると、Configの設定が初期化されていることがあるので毎回確認しましょう。

 本格的な校正には既知の信号源が必要ですが、無線機が手元になければ、SGを借りたり、目的の周波数帯付近に出ている局を探してだいたい合わせます。ACARSや航空管制で事前に周波数校正をしておけば、信号を聞くには十分だと思います。

SDR#上の設定


SDR#を開いてドライバ調整、受信まで出来たら、細かい設定を見なおしてみます。

左の設定画面で重要な点です。

Radio 欄
・復調形式 : 形式にあわせます
・帯域フィルタ設定欄 : ここで数値を入力したり、WF画面上でマウスドラッグでも設定可能です。
              SDR#のCW帯域は手動で最低10Hzまで絞ることができます。
・Squelch スレッショルドdBを設定しておけば、スケルチが効きます。
・ステップ数 : 何Hz飛ばしでシークするか設定できます。 細かく合わせられないと思ったらここを疑います。
・Correct IQ : SDRは中心周波数に機器由来のピークがでますが、これをカットしてくれます。
Swap I & Q : I/Qのチャンネルを交換します。 これを間違えると周波数帯域が反転しているので、中心周波数で合わせると見えるのに、端では見えないという現象が・・・ 結構やられました。 FCD Pro+では反転させます。

 同じ周波数を聞いているかどうかを確認するために、ハンディ受信機/トランシーバーがあると心強いです。

FFT Display 欄
・Resolution : CWなど微小な信号をWF(ウォーターフォール)画面で観測するなら重要です。初期値は4096段階ですが、CWを見ると分解能が足りなかったです。 PC性能と相談して32768程度まで上げました。

Frequency Manager 欄
 幾つか周波数を登録しておくと楽です。

Recording 欄
 記録形式は、復調した音声波形の記録と、BaseBand(I/Qデータ)をそのまま記録するモードの2つがあります。I/QデータはSDR#で記録時の中心周波数起点の帯域幅すべてを再生できるため、帯域内であれば、周波数を合わせ直して好きな形で復調することができます。 ファイルサイズはかなり大きいので気をつけましょう。
 RTLSDRはConfigで帯域幅を絞ればファイル容量が減ります。 複数同時観測しないのなら、1Msps以下に絞っておいて良いと思います。



とりあえず羅列してみました。

 調整が済んでいれば、ゲインの低い全方位アンテナでもビーコン信号なら比較的楽に見つけられます。 実は秋月で売っているハムバンドアンテナでもCWなら強力に見えて、条件が良ければFMパケットをデコードできることがあります。

  衛星の飛来時間は変わっていくので、あとはいかにパスを逃さず受信できる環境を整えるかという問題になります。 ということで自宅ではSDR受信機を屋外設置して、ネットワーク経由でPCとつなげています。


 これは最近上がったPocketQube規格の衛星、Eagle2のRTTYです。 全方位アンテナでもよく聞こえました。100ボーのFSKを視認できます。 この衛星の通信機は1個800円で買える100mW出力のRFICなので驚きです。

 宇宙界隈は今年も忙しくなりそうです。

Cubesatで使われるPC/104規格

海外のCubeSatはCubeSatkitの系譜で、PC/104規格の基板を採用している例が多い。

PC/104とは小型の産業用ボードコンピューターの規格のこと。デスクトップPCのマザーボードとして一般的なPC/AT規格との違いとして、PC/104は計測、制御、通信インターフェース等を増設するために、縦に基板を積み重ねられるようになっている。

 基板同士は連結ピンソケットを介して繋げられている。
 元々はPCのISAバスを連結するためのもので、規格名も104ピンのコネクタを使うことから来ている(らしい)。 現在はISAバスを使うものは少ないので、PCIバスを連結するものが多く、こちらはPC104-PCIやPCI104と呼ばれ、ISAバスとは別に基板間コネクタが指定されている。 PC/AT規格のマザーボードのように、ネジ穴、基板間コネクタの位置が規定されている以外は比較的自由で、様々なコネクタが横からつきだしていたり、製造元やアプリケーションごとにかなりバリエーションが見られる。

Pumpkin社のCubeSatkitは、PC104ボード資産を活かせるようにしつつ、主要なコネクタ接続にはPCI信号のコネクタを使用している。 規格準拠の独自ボードはISAのコネクタを実装しないものが多い。基板外形は上手いこと1Uの構造外形に収まるようになっていて、欧米の大学衛星ではほとんどデファクトスタンダードとなっている。
 過去には、PC/104規格の産業用ボードコンピュータをそのまま搭載した例があったが、最初からCubeSat用に作られた基板のみの場合が大半と思われる。
 
CubeSatkit サイト
http://www.cubesatkit.com/

PCB外形
http://www.cubesatkit.com/docs/CSK_PCB_Spec-A5.pdf

 打ち上げ機会の増大により、参入、開発期間/コストの削減、信頼性の向上要求が増大している。   ただ、基板の規格はあくまでベースなので、分業体制を構築できないと特定企業のフルセットを購入しない限りメリットは薄そうだ。 日本では採用した所ってあるのだろうか…。

(番外編) Original Standard (オレオレCube規格)


本格的な利用は置いといて、自分で作る基板も何かしらの規格化を行っておくと後が楽になりそうだと思い、これまでも趣味でPC/104もどきな構造を入手しやすいユニバーサル基板をベースに作ってきた。 
 汎用を求めすぎて全体設計に失敗する段階にあった頃の自分は、とりあえず制約条件として、CubeSatみたいに、立方体のスタック構造で機能を分けて作ってみよう、程度の動機で始めたのだが…。

PC/11(仮)


 これはユニバーサル基板(UP-204GSR)をスタックするために作ったもの。 この基板を、10mmスペーサと標準的な連結用ピンヘッダで連結して立方体をつくると、ちょうど東急ハンズで購入できる50mmのプラスチックキューブに収めることができる。ピンヘッダ1列で11ピンなので、PC/11。 ちょっと足りないので2列(22ピン)ほしいなぁと作ってから思った。
規格に沿って製造したものとして、データロガー基板MORIKAWA_LOGがある。

PC/40(仮)

立方体教へようこそ

最近目をつけたのはB基板。95x72mmあるので、評価基板やブレイクアウト基板を載せて、余裕のあるブレッドボードモデルが組みやすい。 PC/11では屋外で機能評価するにはなにかと窮屈すぎたので、こちらはモニタリング用のセンサやIFを組み込む余裕を見込んでいる。ネジ連結なので強度の余裕もある。

連結用ピンソケットは40ピンタイプを使った。 ピンソケット同士を連結すると、10mmの連結スペーサでは高さが足りないので、調整のためすべてワッシャを嚙ませている。

わざわざ72mm角の正方形に基板を加工しているが、見た目にこだわってしまっただけなので、立方体縛りがなければ外形加工せずそのままスタックするほうが明らかに便利だろう。 そうして脳が規格化に縛られ始める…。

PC/11 実装例

PC/40 実装例
 スタック型の基板にはひとつ欠点がある、それは一度組み上げると真ん中の基板にアクセスするために、全部ばらさなければならないということ。 規模が小さいうちは良いのだけれども…
 構体がある程度大きくなってくると、基板を固定するパネル構造を取り外し可能にしたり、井桁構造に組み付けるほうがメンテナンス性が良くなる。


某計画で圧力容器内に設置するために制作した構体の初期案。 よくあるスタック型。
一応各階ごとに分離することはできたが、電装ハーネス処理を考えてなかったのでボツになったもの。 構造はMDFで、ホームセンターの加工サービスを利用。

Ver:2 大型のバッテリを中央の柱状空間内部に配置。 取り外し可能な板を4面に設置して、ネジ付きスペーサーで固定できるようにした。 基板や記録装置を4枚の板に組み付けて固定する。 柱と板の間に隙間があるので、電装の引き回しもしやすい。