2010/02/21

スーパーキャパシタとDC-DCコンバーターの放電実験

DC-DCコンバーターが届いたので、太陽電池で充電した100FのEDLC(スーパーキャパシタ)をつかって、XBeeが連続で何時間駆動できるか簡単に実験してみた。

 条件:
 EDLC: 100F 2.5V Rubycon 秋月で購入.
 DC-DC:TPS61200 超低電圧DC-DCコンバーターモジュール (ストロベリーリナックス製)
 XBee: series2 (zigBee) 1dB lowest(1mW). 15mA current consumption
 COM: 9600bps loopback (on X-CTU) (送受信を連続して続ける設定)
 電圧はMS8209に10kΩの抵抗を介して測定。

テストベッド。 XBeeソケットのLEDがかなり電流を喰っていたので、今回は消灯させている。 

2種類のモジュール 片方が0.3Vまで下がっても動作するTPS61200
もう片方が、0.8V下限だが効率の良いAS1322A 
ストロベリーリナックス製


100FのEDLCは、安全のためメスのジャンパワイヤをはんだづけした。
こうすればショートしにくいはず。

 結果




縦が電圧 横が時間。 約85分でXBeeは動作を停止した。

DC-DCコンバーターの特性として、電圧が低下するほど、負荷電流が増大するため、EDLC電圧 =残容量 が加速度的に低下していく様子が見て取れる。
予測よりもとても短い時間しか駆動できなかった。

 もう一つ、効率が高めのコンバーターも用意した。AS1322Aを使用したモジュールは効率9割を謳い、0.8V付近が最低動作電圧となっている。上のグラフから、0.8V付近が最低動作電圧でも、おそらく駆動時間にはほとんど影響が無さそうだ。 こちらで実験してみよう。

結果

 日向に放置した太陽電池で充電していたら、耐圧を越えた3.0Vまで充電されていた。
 まだ充電管理していないので、ホントはやっちゃいけないんだけど・・・。
そのままAS1322AをXBeeにつないで放電したのが上記のグラフとなる。 横軸はX:volt 0:time(s)
 これじゃTPS61200と比較しにくい。  過充電の結果130分も動いた。 同じ容量なら、電圧の差がそのまま駆動時間に影響するのがお分かりいただけただろうか。 

 TPS61200と同じ2.6V付近から比較したものが下記のグラフとなる。


 これを見ると、AS1322Aのグラフでは、後半がなだらかになっているのが一目瞭然。最終電圧はTPS61200が0.5V AS1322Aが0.6V 程度だった。 

 意外にもおまけで買った高効率の方が粘るという結果になった。
 TPS61200にくらべ、AS1322Aは後半の電圧低下が鈍く、粘っていた印象がある。

 低電圧で大電流をとりだせる太陽電池からエネルギーを得るのが、 TPS61200の使い方なようだ。

スーパーキャパシタの容量を使い切る方法としてDCDCは有効だが、昇圧しているのでどうしてもノイズが出てしまう。 電圧は一定でも、取り出せる電流は刻々と変化するため、出力の限界点ではGPSなどが測位できなくなった。 XBeeは最後までループバックテストができていたものの、距離1m程度の話なので、後半は通信距離が落ちている可能性が高い。フィルタを組んで影響を抑えるのと、電流が必要な機器、RF関係のモジュールはDCDCの効率が落ちない範囲のみで使うといった工夫が要るだろう。

 太陽電池を使う場合、普通は降圧する設計にするので、小型の太陽電池を昇圧しようと思っている場合は、出力電圧と効率の関係、その結果発生するノイズを考慮する必要がありそうだ。

キャパシタの容量は、 Q=F(V1^2 - V2^2)/2 で示され、1/3600を掛けてWhに換算する。
(F=ファラド、V1(最大電圧)、V2(最低電圧))

このキャパシタは2.5V100Fなので、0Vまで使い切ったとしても86mW/h 似たような容量の電池を探すと、CR927という3V 30mAhの豆粒程度のボタン電池と同じということになる。 自然放電も無視できないため、電池として期待すると残念だけど、充放電で劣化しにくい、瞬間的に大電流をとりだせる、使用できる温度範囲の広さといった物理電池としての特性は、バッテリのピーク電流補助や、厳しい環境で稼働するロボットの電源バッファとしてはとても魅力的だ。

2010/02/14

XBee(Series2)の通信距離を測定してみた


XBee (ZigBee対応series2 外部アンテナタイプ) の通信距離をしらべた記録。


製品ラインナップがカオスすぎて、名前の後ろにつけなきゃいけない属性が多すぎる・・・

   DigiのXBeeモジュールを買う際、つい外部アンテナタイプを選択してしまったので、これは屋外での通信距離を測ってみたい。
 なんで旧タイプを買わなかったかといえば、店頭の説明書きに消費電力が書いてあり、旧型は電波強度を選べず消費電力が一番大きそうだったから。 というもの。 ファームウェア更新で選べるのかもしれないですが。 

他のタイプを所有していないので、比較出来ず面白くないのですが一応。

ここはとある多摩川の河畔。 

<準備>

機材一覧。 

実験に使用したXBeeモジュールとその他。

  親機側は金属ハウジングに入っている。 詳細は前記事のとおり。
ENDデバイス側は、実験用のモジュールの開発用部品が見えているが今回使用したのはJPEGカメラのみ。Arduinoは相変わらず3.3Vレギュレータ役。


親機はVAIOのLCD天板にテープで取り付けた。 カッコよさ優先で作ったことがばれますね^^;
(いいえ機能美です。 キリッ)

END側は、地面干渉を考慮して三脚に設置。 だいたい地面から80センチ程度の高さ。
あとで取り外し、地面に直置きした場合も調査した。

X-CTUの画面。 

<設定・測定方法>


  • 両方共、送信出力は最大/Boostmode(2mW出力)。
  • END側のシリアルを結線してループバックさせ、X-CTUの画面でエラーが出る地点まで親機をもって歩く。
  • 速度は9600bps。 寒かったので他のボーレートはまたいつか。

  • 親機は電力管理なし。子機は1秒以上通信がなければ待機モードに移行。
  • 地上からの高度80センチ付近を維持する。
  • その後、地面レベルでの距離を測定。

結果

 上記の条件で145m程度届いた。

※ 地面に置いた場合は、50mが限界だった。

 HT-03AのGPSで移動範囲をマッピングしてみた。 左の(END)地点が子機の設置場所。 白い線が通信できた最長地点(それ以上離れると通信困難か、パケットロスが多くなる)


目視だと結構遠いと思ったけれど、仕様の範囲に近い。  親機を金属ハウジングに入れたので距離に悪影響があるかもと思っていたが、そういうことはないようだ。

140m離れ、シリアルのループバックではなく、JPEGカメラを接続して画像受信をしてみたが、 問題なく取得ができた。 9600なのでVGA圧縮イメージの取得に40秒もかかる。衛星通信みたいで面白い。


 製作にあたって、無線部分は高速転送よりは通信距離を、そして低消費電力を優先する予定なので、この現状で十分すぎる性能が出ている。 子機の出力を半分に絞って、さらに低出力にするとどうなるのかを調べる前に日が暮れてしまって、手がかじかんでキーボードを打つどころではなくなったので、実験終了。

XBee Proをつかえば、1200mは通信できるらしい。 ただ、広い場所と金属や障害物のない見通し距離で、2.4GHz帯がクリアな場所となると身近にはなかなか無い。(河原とか砂漠くらいでは…)

太陽も沈み、暗くなった川面をJPEGカメラで撮影。 明るいときに撮らなければ。

おはり

2010/02/13

JPEGカメラの動作確認


ロボットの前に、ワイヤレスJPEGカメラとしての動作を検証した。
ロボットとしての自律動作の他に、プログラムが吹っ飛んでも遠隔操作できるようにしたい。
XBeeのモジュールはシリアル通信のほかに、センサやI/Oとして設定もできるので、遠隔動作時に使うことができるだろう。 


シリアル出力JPEGカラーカメラの絵(クリック実寸)。 蛍光灯下な上にピンボケしている。
下の写真のシステムで撮影。

XBeeは見栄はって外付けアンテナ。 正直普通のホイップアンテナ型で良い気がする。

PC側のアダプタはXBeeの設定もできるようになっている。
XBeeの電源だけスイッチでON/OFFできるため、ファーム飛ばしても復旧可能。 
というか飛ばしたのでそうしました^^

タカチ製の小さなアルミケースに入れた。 外付けアンテナのおかげで結構かっこ良い。 

もう片方はロボット開発用ができるよう、
透明なケースにブレッドボードとArduinoとアンテナをとりつけた。
100FのEDLCも入れることができる。
まだArduinoは単なるレギュレータ代わり。

テストではPCからこちらのソフトを使って画像を取得した。 上の写真は転送が乱れた珍しい例。

低ボーレートだとけっこう待たされる。 ワイヤレス経由ではすぐ機嫌が悪くなるので、カメラの制御はArduinoにさせるようにしたい。


JPEGカメラは10秒たつと勝手にスリープモードに入るらしい。XBeeも出力を絞ったりスリープ頻度を増やして省電力にすることで、待機時間を伸ばせそうだ。 計測してみなくては。

参考
JPEGカメラモジュール http://www.silentsystem.jp/c328.htm

と、XBeeのアダプタ http://blogs.yahoo.co.jp/carcon999/30557062.html

試験機制作中


左が基地局、右が実験機

まだ開発中

2010/02/08

MINERVAみたいなロボットを作ってみる

GoogleSketchUP 宇宙機シリーズその一  MINERVA (ミネルヴァ)

 MUSES-C「はやぶさ」に搭載された小型惑星探査ロボットである。 小惑星の微小重力下でも動き回れるよう、内蔵したモーターの慣性トルクで自らを回転させ、レゴリスを蹴って移動する。

 残念なことに、投下されたとき、はやぶさはイトカワから上昇中だった。 18時間の交信中、遂に着陸すること無く、ミネルヴァは人工惑星となったとされている。
 その当時の私は中学生で、カメラのひとつが捉えたはやぶさの太陽電池パネルの映像以外のことを知らなかった。

 今はふとしたきっかけで大学衛星の現場に関わる機会を得て、その設計思想がとても参考になるということに気づいた。 MINERVAは微小重力下で探査するために作られたが、 内容を見ると、小型衛星そのものである。
 しかも、深宇宙では熱環境が地球軌道よりも厳しいため、通常のバッテリではなくスーパーキャパシタを補助電力に用いている。  この、常時電源ONというよりは、太陽ある限り生き残り続けようと言う方式が気に入っている。 極環境でも生き残り続けるハードウェア。

 参加したプロジェクトとは別に、 マイペースな開発がしたくなった。
なので個人の趣味として、MINERVAみたいなロボットを作ってみたい。 ただし地球上で活動することを目標に。 惑星同期人工衛星だぞー (それをいったらポケットの携帯電話も衛星ですね^^)
 想定は、太陽光のみで稼働し続ける遠隔ロボット  どう考えても衛星の定義ですね・・・。

主なコンポーネント 太陽電池、キャパシタ、マイコンボード

 設計中の電源管理用回路と、XBeeが加われば、まずはシステムバスとしては成り立つ。
キャパシタと太陽電池 (まだ半分だけ) での発電力は問題なさそう。


     試作ボディは紙製。 8面体なのは、MINERVAを意識したため^^

 MINERVAも設計当初は8面体だったと、日経エレクトロニクスの記事で読んだ。

 ・日照中はキャパシタに電力を貯めつつ、時折各種センサを起動してデータを収集。
 ・無線ZigBee規格でまずメインPCとの通信業務をこなす。 ZigBee自体にマイコンとしての機能が少しあるので、電力監視の他にも、衛星機能を遠隔操作するモードも与える。 こんなロボットを量産して惑星表面にばらまいて、メッシュネットワークを構築するとか。
 ・できればカメラ積みたい。 手軽に買える範囲だと、シリアルJPEGカメラしかないので画像処理は難しいけど。

 という感じで、たとえ曇り続きでもパワーセーブモードに移行し、業務を減らしてキャパシタの充電を優先するなど、飛んだり走りまわったりしないけど、設計しなきゃいけないことが多い。
 こういう面白いことをぶち上げないと、プログラミングの勉強に身が入らない気がしたので、あくまで個人的なプロジェクトです。

太陽電池試験運用


太陽電池をつなげてスーパーキャパシタを充電する実験。

510円のPowerFilm太陽電池を4枚並列につなぎ、特性を調べた。


 直射日光下
  MAX output  6V、100mA
  ただし逆流電流防止に適当なダイオードを介すと、60mA程度になってしまう。

   直接陽があたる場合は、太陽電池による電子機器の直接駆動が可能なレベルの出力がある。

< スーパーキャパシタ>
 秋月電子の2.5V 100F品を使う。 ものすごい容量だ。 1000F級のコンデンサもあったが、値段が1万円を超える領域となってしまうのでパス。

 充電は逆流防止ダイオードを介して接続し、キャパシタの電圧をマルチメータで測定しつつ耐圧を超えないようにする。 耐圧を考えると、太陽電池の電圧は高すぎるかもしれない。といっても太陽電池の出力からして急速に充電されるわけでもないのでそんなに焦ることはないようだ。
 キャパシタはすこしでも電流電圧があれば電気を蓄えてくれる。

<放電>
 こうして太陽電池により2時間ほどかけて充電されたスーパーキャパシタを、たまたまあったワンダースワンに接続して、何時間動き続けるか試した。
ワンダースワン(初代)は電池の持ちの良さで有名だ。 0.3Wの機器で果たしてどれくらい動くのか。

結果 2時間程 動いていた (残電圧0.8V)

現状では特に問題なさそうだ。あとは超低電圧DC-DCを介せば、もっとうごくかもしれない。


2010/02/04

PowerFilmの太陽電池を買ってみた




  千石電子の店頭販売で入手したNEATなフィルム太陽電池。
とても薄くて、プラスチックフィルムのように曲げることができる。


  調べるとPower Film Inc の製品らしい。
http://fuji-fine-chemical.p-kit.com/page48201.html に説明を発見。
 その場にあった製品として、巻いて持ち運べる充電器があった。
結構便利そう。 



  店頭では切れ端と言うか 小さなモジュールも売っている。説明はあまり多くない。
現在のところ、店頭販売だけの様子。   


 もっと種類があるが、小さなモジュールを中心にサンプル買いしてみた。どれも安い。
 大きくなるにつれて電圧、電流共に大きくなる。

一覧
なぜかこれだけ電極が銅色 3V×22mA

 4.2V×22mA 
3V×25mA



   もうひとつ秋月電子のモジュール(0.5V 500mA)を揃えた。250円。 


  測定 正しい測定が思いつかないので、とりあえずデジタルマルチメータで端子間電圧と電流を測定した値を載せる。
 なおモジュール上下に帯状に電極端子が出ているが、モジュール全体を覆うフィルムが邪魔で導通できない。 なので一部分を剥がして電極を露出させる。

 この表面フィルムを剥がすのが結構むずかしい。 デザインナイフで下の電極を剥がさないよう慎重に切り取った。


 測定結果。 






測定器MS8209  400mA Range




 フォーマット : 公称 V, mA 大きさ、店頭価格 、後ろが実測1:蛍光灯にギリギリまで近づけた値(28000Lux) /実測2:蛍光灯で照らされた部屋の値(754Lux) MS8209の内蔵照度計より。

PowerFilm
SP 3-37            3V×22mA       64mm×37mm      340      3.7V    4.5mA   /  0.98V 0.19mA
TX 3-25           3V×25mA      114mm×25mm     260      4.0V       8mA   /  3.1V     0.2mA
SP 4.2-37      4.2V×22mA         84mm×37mm    510      5.3V   5.8 mA   /  3.2V   0.18mA     
シリコン太陽電池モジュール   0.5V 500mA        ¥250       0.417V  25mA /  310mV 1.0mA


蛍光灯がそんなに明るくない状態だったので参考までに。 あとで太陽光下の値を測定したいところ。
 いままで太陽電池といったらでかい、重いモジュールしか手に入らなかったので、フレキシブルな素材の太陽電池が安価に入手できるのはうれしい。
曲面に貼り付けるといった芸当もできるし、軽いから手のひらサイズの小型ロボットの電源に使えるかも。

 まずは 100F級のスーパーキャパシタを入手して充放電回路を作って検証してみたい、というのが当面の目標。