11月24日の15時50分、種子島からH-IIA 29号機が打ち上げられた。
その後、日没後1時間の関東で不思議な雲を見たので、方位や距離を調べてみた。
11月24日 17時20分ごろ、作業が一段落したので、見晴らしの良い場所から西の空を見ると、日没後の南西の方角に普段とは違う雲が見えた。
夕焼けの名残りで僅かに赤い西の空に、輝く白い帯状の雲があった。 一番白い場所では、彩雲のような細かい虹色の模様が見える。
けっこう遠くまで広がっているらしく、尾は暗くなりながらも、南まで延びているようだった。
その時は、珍しい飛行機雲かなと思い、カメラをとりに戻って、何枚か手持ち撮影した。 風が冷たく、良いカメラでの撮影はそれきりになってしまった。
17時30分 一旦カメラの写真を吸い出しに戻ったあと、もう一度、空を確認しに戻った。夕焼けの光が消えて、暗くなってからも、青白っぽい雲はかろうじて観察できた。
関東圏の広範囲で、この雲は目撃されていたようで、たくさんの人が写真をアップロードしていた。
http://togetter.com/li/904464
24日の日没時刻は4時半ごろなので、5時半に輝いていた雲はかなり高高度であると思われる。
ネットで検索しながら写真を見返すと、 夜光雲と特徴が似ている。
夜光雲そのものは、高緯度で見られる珍しい現象なようで、 高度80km付近の中間圏で、氷の結晶を主成分とした雲が発生し、日没後や日の出前の上空で、太陽光を反射して白く輝いて見える。
日常的な微小な流星塵や火山の噴出物などが核となり、氷の結晶に成長するらしい。
ロケットの打ち上げが人工的に夜光雲のような発光雲を引き起こす事も知られている。 となると、H-IIAの打ち上げが関係していてもおかしくなさそう。 ロケットの排気によって氷の結晶ができたのだろうか。
ロケットが高層大気で引き起こす現象は神秘的に見えるものが多くて、探すとたくさん見つかる。
いずれも観測地では日没後や夜間で、ロケットの飛翔経路には日照があるというタイミングだ。
H-IIAロケットの飛翔経路
ちょっと古い資料だが、29号機と同じく、204型で、静止軌道へ投入された11号機の飛翔データ(kml形式)が公開されている。 GoogleEarthで読み込むと、グリグリ動かして確認できる。
第一段までのシーケンスは、両者でほぼ同じだ。
29号機の打ち上げ計画書 http://www.jaxa.jp/press/2015/09/files/20150918_h2af29.pdf
11号機のデータ、kmlファイルの場所 http://www.jaxa.jp/countdown/f11/
飛翔経路によれば、H-IIAの経路は雲と同じ方角から始まっている。 山の近くで、だいたい90km程度の高度がある。
方位の特定
方位については、ランドマークとなる地形や建物から、おおよそのものを特定した。
その結果が、以下のGoogleEarthで表示した線となる。
線を延長すると、おおよそ種子島の方角と一致する。
ただ、画面左側にも帯は続いているので、その先端についてはもっと太平洋側に張り出しているのかもしれない。
仰角については、星を使う。
写真にはかすかだが、恒星がいくつか写っていた。 ノイズも多いので、手ブレしていたカットでぶれた星像があったものを選んでプロットし、Stellariumというフリーソフトで同じ方角の星図を表示して、Photoshopで簡易的に合成してみた。
写真だと70mm換算で撮影していたので大きく見えるけど、実際はそれほど大きくない。 写真で輝いていた部分は、仰角にして5°から7°、 方位角にして25~30°程度の範囲に広がっていたようだ。
AGIのSTKという航空宇宙用の解析ツール(フリー版)を使い、単純な検証として、当時の時刻で太陽が見える緯度経度と高度を強引にあたってみた。
方位で設定した方位Aと方位Cの線の上にある高度を見てみることにする。
写真から、方位Aの雲は仰角7°、方位Cは仰角4°となる高さにあると仮定して、
仰角の延長線上で、かつその高度で日照がある場所を探す。
今回は1地点のデータなのと、雲が見えなくなるまで観測したわけではないので、雲の高度における日没が正確にはわからない。
今回は、写真の時刻から10分程度日照がある範囲なら良しとする。
方位Aでは、四国の室戸岬のあたりに1Aを、四国と紀伊半島の中間に2Aというものを設定した。 それぞれ観測点からは同じ角度に見える高度に設定。 どちらも太陽が見えるが、当然1Aのほうが日照時間が長い。
方位Cでは、室戸岬の南の海上に1Cを設定してみた。 仰角が低いため、同じ高度でも遠くになる。
仰角と日照高度の情報によれば、四国沖~紀伊半島沖の高度80km付近に雲が存在していたことになる。
中間圏で雲ができる高度の条件は満たしていそうだ。
座標については、日没時刻の解釈で前後に誤差が大きい。
四国や和歌山などではほぼ真上に見えたはずだけど、衛星画像や過去の予報では曇りだったようだ。 単純に観測できなかったのだろうか。
それにしても、あの雲が種子島から打ち上げられたH-IIAがもたらしたものだとすると、遠く関東でロケットの引き起こした現象を観測することができたということで、なかなか感慨深い。
その後、日没後1時間の関東で不思議な雲を見たので、方位や距離を調べてみた。
17:23 東京都 調布市 RX100M3 1/4秒 ISO800 焦点距離21.4mm |
夕焼けの名残りで僅かに赤い西の空に、輝く白い帯状の雲があった。 一番白い場所では、彩雲のような細かい虹色の模様が見える。
けっこう遠くまで広がっているらしく、尾は暗くなりながらも、南まで延びているようだった。
その時は、珍しい飛行機雲かなと思い、カメラをとりに戻って、何枚か手持ち撮影した。 風が冷たく、良いカメラでの撮影はそれきりになってしまった。
17:30 iPhone6s 1/15秒 ISO2000 トリミング済み |
17時30分 一旦カメラの写真を吸い出しに戻ったあと、もう一度、空を確認しに戻った。夕焼けの光が消えて、暗くなってからも、青白っぽい雲はかろうじて観察できた。
関東圏の広範囲で、この雲は目撃されていたようで、たくさんの人が写真をアップロードしていた。
http://togetter.com/li/904464
24日の日没時刻は4時半ごろなので、5時半に輝いていた雲はかなり高高度であると思われる。
ネットで検索しながら写真を見返すと、 夜光雲と特徴が似ている。
夜光雲そのものは、高緯度で見られる珍しい現象なようで、 高度80km付近の中間圏で、氷の結晶を主成分とした雲が発生し、日没後や日の出前の上空で、太陽光を反射して白く輝いて見える。
日常的な微小な流星塵や火山の噴出物などが核となり、氷の結晶に成長するらしい。
ロケットの打ち上げが人工的に夜光雲のような発光雲を引き起こす事も知られている。 となると、H-IIAの打ち上げが関係していてもおかしくなさそう。 ロケットの排気によって氷の結晶ができたのだろうか。
ロケットが高層大気で引き起こす現象は神秘的に見えるものが多くて、探すとたくさん見つかる。
いずれも観測地では日没後や夜間で、ロケットの飛翔経路には日照があるというタイミングだ。
H-IIAロケットの飛翔経路
ちょっと古い資料だが、29号機と同じく、204型で、静止軌道へ投入された11号機の飛翔データ(kml形式)が公開されている。 GoogleEarthで読み込むと、グリグリ動かして確認できる。
第一段までのシーケンスは、両者でほぼ同じだ。
29号機の打ち上げ計画書 http://www.jaxa.jp/press/2015/09/files/20150918_h2af29.pdf
11号機のデータ、kmlファイルの場所 http://www.jaxa.jp/countdown/f11/
H-IIA 11号機のロケット飛翔経路データ |
方位の特定
方位については、ランドマークとなる地形や建物から、おおよそのものを特定した。
その結果が、以下のGoogleEarthで表示した線となる。
線を延長すると、おおよそ種子島の方角と一致する。
ただ、画面左側にも帯は続いているので、その先端についてはもっと太平洋側に張り出しているのかもしれない。
方位とH-IIAの飛翔経路を表示させてみた。 それぞれのイベント時の高度を付け加えている。 |
仰角の特定
仰角については、星を使う。
写真にはかすかだが、恒星がいくつか写っていた。 ノイズも多いので、手ブレしていたカットでぶれた星像があったものを選んでプロットし、Stellariumというフリーソフトで同じ方角の星図を表示して、Photoshopで簡易的に合成してみた。
写真だと70mm換算で撮影していたので大きく見えるけど、実際はそれほど大きくない。 写真で輝いていた部分は、仰角にして5°から7°、 方位角にして25~30°程度の範囲に広がっていたようだ。
その時点で日照がある高度と地点
AGIのSTKという航空宇宙用の解析ツール(フリー版)を使い、単純な検証として、当時の時刻で太陽が見える緯度経度と高度を強引にあたってみた。
方位で設定した方位Aと方位Cの線の上にある高度を見てみることにする。
写真から、方位Aの雲は仰角7°、方位Cは仰角4°となる高さにあると仮定して、
仰角の延長線上で、かつその高度で日照がある場所を探す。
今回は1地点のデータなのと、雲が見えなくなるまで観測したわけではないので、雲の高度における日没が正確にはわからない。
今回は、写真の時刻から10分程度日照がある範囲なら良しとする。
おおよその地点を設定。 数値は各ポイントの高度と観測点からの距離、仰角 |
方位Aでは、四国の室戸岬のあたりに1Aを、四国と紀伊半島の中間に2Aというものを設定した。 それぞれ観測点からは同じ角度に見える高度に設定。 どちらも太陽が見えるが、当然1Aのほうが日照時間が長い。
方位Cでは、室戸岬の南の海上に1Cを設定してみた。 仰角が低いため、同じ高度でも遠くになる。
位置関係 |
当時の時刻(UTC)のとき、1Cから太陽を見たところ。 |
仰角と日照高度の情報によれば、四国沖~紀伊半島沖の高度80km付近に雲が存在していたことになる。
中間圏で雲ができる高度の条件は満たしていそうだ。
座標については、日没時刻の解釈で前後に誤差が大きい。
四国や和歌山などではほぼ真上に見えたはずだけど、衛星画像や過去の予報では曇りだったようだ。 単純に観測できなかったのだろうか。
それにしても、あの雲が種子島から打ち上げられたH-IIAがもたらしたものだとすると、遠く関東でロケットの引き起こした現象を観測することができたということで、なかなか感慨深い。
追記
ひまわり8号の画像から分析している方のブログ記事ひまわり8から見たロケット打ち上げ ~ H-IIA F29のロケット雲を宇宙から見よう!
http://blog.syo-ko.com/?eid=2328
ロケット雲の発生と、流れていった方角が写真の雲と一致している様子。
雲については、固体ロケットのSRBが発生源であるようだ。
雲については、固体ロケットのSRBが発生源であるようだ。