ハードウェア的な観点では、今は32bitMCUの低価格化、高性能化、低消費電力化が著しい。動作周波数も100MHz超えが当たり前で、30mA程度しか消費しない。
動作電圧範囲が広く、単純な8ビットMCUが不要になることはまだないだろうけど、クラシックなAVRマイコンは値上がりしており、価格競争力は無くなりつつある。
そしてコモディティ化により、公式ボードでは不可能な値付けの安価な互換ボードがたいていの需要を満たすようになってしまった。
Arduino Nano Every
他のボード2種はATSAMD21(Cortex-M0+)と無線モジュールを搭載したArduino zero(生産終了済み)ベースのIoT向けボードだが、 Nano EveryはWifi Rev2と同じくAtmega4809を採用していて、安価で5V単電源な8ビットAVRボードだ。
Atmega4809はATmegaと名がついているが、アーキテクチャはXMEGAベースとなり、クラシックAVRとの間にレジスタレベルの互換性は無い。
https://blog.kemushicomputer.com/2018/08/megaavr0.html
もちろん、ArduinoとしてはArduinoAPIのみで記述されたスケッチやライブラリは普通に動作するし、Nano Every用のボードオプションとして、I/Oレジスタ操作についてはAPIでエミュレーションするコンパイルオプション(328Pモード)がある。
公式のMegaAVR0ボードはどれもブートローダーを使わず、オンボードデバッガで直接書き込みを行っている。
ボードを観察してみると、プログラマ・USBCDCとしてATSAMD21が搭載されている(中央の四角いQFNパッケージ)MCU的にはnEDBGに相当してそうだけど実装の詳細は不明。
EDBGのお陰で、ユーザーはブートローダ無しでもプログラミングとシリアルデバッグを意識せず使えるようになっている。
megaAVR-0はプログラミング方式がUPDIになり、専用のonewire UARTで書き込みを行う。Nano EVERY上のUPDIラインは配線が引き出されていないので、ボード上の石に対して独自にプログラマをつなぐことはできないことになっている。ただし、MCU実装エリア付近のボード端に未実装パッドが一つあり、これは回路図上のD3(未実装)と思われるため、3V3レベルのUPDIがここから引き出せる。
ATmega4809ボードとしてのピンマップを調べてみたのが下の図。
(公式の回路図 https://content.arduino.cc/assets/NANOEveryV3.0_sch.pdf )
引き出してあるI/Oが少ないので気になっていたが、UARTについてはハードウェア的に4chを使うことができそうだ。
ただし、公式のボード定義では互換性を優先し、2ポートしか使用していない。
MCUの潜在力を引き出したいならば、有志が開発しているmegaAVR0向けのボード定義 megaCoreX(https://github.com/MCUdude/MegaCoreX)を利用するのが良いだろう。
過去のArduino Nanoと比べたメリットは以下のようになる。
・内蔵オシレータによる20MHz/16MHz駆動(最大周波数は5V時のみ)
・RAM ROM容量の増加 (6kB / 48kB)
・ピン単位の割り込みが可能
・シリアル通信は2ポート定義されている(USB CDCと外部で1chずつ別ポート)
・書き込みにブートローダーが使われていないので、起動時にブートローダがノイズ等で受信待ちループに入ってしまう事故は原理上発生しない
・シリアル通信のボーレートは1Mbpsくらいまでは文字化けもせず送受信できる
(※ただし、230k以上はCPUの処理が追い付かなくなり、だんだん各バイト間に処理落ちの隙間が開きはじめる。 EveryのUSB CDC側は500kbps程度までしか受け付けない)
・analogRefelence Vref電圧の増加
(0.55V 1.1V, 1.5V, 2.5V, 4.3V)
INTERNAL0V55
INTERNAL1V1
INTERNAL1V5
INTERNAL2V5
INTERNAL4V3
・割と使える内蔵温度センサ ( https://blog.kemushicomputer.com/2021/02/tinyavr-1.html )
・5V系のために降圧DCDCを搭載(MPM3610)https://www.monolithicpower.com/jp/mpm3610.html
・内蔵オシレータによる20MHz/16MHz駆動(最大周波数は5V時のみ)
・RAM ROM容量の増加 (6kB / 48kB)
・ピン単位の割り込みが可能
・シリアル通信は2ポート定義されている(USB CDCと外部で1chずつ別ポート)
・書き込みにブートローダーが使われていないので、起動時にブートローダがノイズ等で受信待ちループに入ってしまう事故は原理上発生しない
・シリアル通信のボーレートは1Mbpsくらいまでは文字化けもせず送受信できる
(※ただし、230k以上はCPUの処理が追い付かなくなり、だんだん各バイト間に処理落ちの隙間が開きはじめる。 EveryのUSB CDC側は500kbps程度までしか受け付けない)
・analogRefelence Vref電圧の増加
(0.55V 1.1V, 1.5V, 2.5V, 4.3V)
INTERNAL0V55
INTERNAL1V1
INTERNAL1V5
INTERNAL2V5
INTERNAL4V3
・割と使える内蔵温度センサ ( https://blog.kemushicomputer.com/2021/02/tinyavr-1.html )
・5V系のために降圧DCDCを搭載(MPM3610)https://www.monolithicpower.com/jp/mpm3610.html
ボード設計で気になったのはアナログ入力兼I2Cのピン。megaAVR0ではI2Cとアナログ入力ポートは兼用されていないので、二つのピンを束ねて、もともとのArduino Nanoでの端子配置を再現している。ドライバ側で片方が選択されたら、もう片方をHi-Zにしているようだ。
ボードの仕様から考えると、ATmega2560ほどではないが328Pには乗らないプログラム規模で、シリアルがちょっとほしい、ロボットなどの駆動部に向いている。
低価格とはいえ、外部電源入力はDCDC採用でかなり駆動に余裕がある設計となっている。
VINには6V~21Vと幅広い電圧入力が可能になっていて、9V以上の電源から駆動してもレギュレータの熱損失で動かせないといったトラブルが減るだろう。
VINには6V~21Vと幅広い電圧入力が可能になっていて、9V以上の電源から駆動してもレギュレータの熱損失で動かせないといったトラブルが減るだろう。
VIN経由であれば、最大で1.2Aまで負荷を駆動できるようなので、サーボモーター数個などを繋ぐ用途でも駆動には若干余裕が持てると思う。
ただしUSB接続時は、USBから5Vをとるため、USB側の供給能力に左右される。