スキップしてメイン コンテンツに移動

型落ちのミラーレス機でレンズ沼


昨年の秋、Nikon 1 J2 を中古で見つけた。 すでに6年前の機種なので、標準ズームレンズ付きで1万円だった。
これは、光学系の性能を限界まで使うリモセン衛星のような撮像、画像処理技術を、誰もがそうと知らず日々使いこなし、オンラインに投稿している時代に、オフラインで光学系を試行錯誤する(レンズ沼に落ちる)記録。





いつの間にか所有していたCマウントレンズの特性を探る

 SPACECOMの手動ズームレンズ G6x16-1.9 Macro-L
何年か前に中古で手に入れてあったもの。
1インチセンサ用で、35mm換算で約43~270mmの焦点距離となる。 マクロモードもあって、数センチからピントを合わせられる。
http://spacecom.co.jp/products/g6x16-1-9-macro-l/
小さいけど産業用ゆえ、金属製で620gあり、見た目よりずっしりとしている。
カメラ用レンズとしてみるとものすごく明るい望遠系だ。
 望遠側は絞り開放だと快晴下でパープルフリンジが目立つ。 かなり絞らないと難しいレンズだ。

 J2のフルマニュアル操作については、ピント合わせが難しかった。 晴天下では液晶が見にくいことも手伝い、絞り解放に近いと狙ったピントを出せない失敗が多い。

Cマウントレンズの望遠端で遠方の花火(トリミング)
  いつもコンデジにまかせていた値をマニュアル操作しているうちに、だんだんとレンズの癖を会得していく。

直焦点撮影

 簡単に望遠鏡の直焦点撮影に挑戦してみた。 数年前に中古で入手したMEADE ETX-60AT (焦点距離350mm f5.6) 1インチセンサでは940mm相当の単焦点となる。
 鏡筒へはCマウントアダプタ - アイピースリングアダプタで接続。



 秋晴れの朝に撮った80km先の富士山(RAW現像)。 裾野を写すために、2枚を合成している。

10月18日夜、月と火星(左下)が接近していたので、撮影に挑戦。 ちょうど視野に収まった。
固定点から望遠撮影するなら、デジタル雲台付きレンズと考えるととても使いやすい。
あとで登場する専用の超望遠レンズと比較すると色にじみが多く、エントリーモデルゆえのレンズ性能不足が見え隠れする。

やっぱり専用設計のレンズは値段相応の価値があるのだな(沼の淵に立ちながら)。
たいていはRX100を使っているが、仕事で出先の記録写真として超望遠と超広角が欲しいと思う場面がいくつかあった。
  Nikon1自体は既にシリーズごと終息してしまったが、大きさが気に入ったので、中古でJ5のボディと超広角、標準単焦点、超望遠の3種類を入手した。 これでほぼレンズ交換ができるRX100みたいな形になる。


1Nikkor VR 70-300mm


 沼に落ちたきっかけのレンズ。 1インチセンサでは望遠端810mmの超望遠レンズになる。ただし、J5と組み合わせて890gで済んでしまう。
  
810mm f5.6  1/500s ISO720 トリミング 
換算810mm F5.6 1/400秒 


J5にはJ3のようなEVFやメカシャッターは無いけれど、手持ちで低空を通る航空機を追ってみたら、強力な手振れ補正のおかげで思った以上にちゃんと撮れていた。

 空に浮かぶ安定した被写体ということで、光学系の癖や設定の効果を確認するために月を撮る。 フォーカスはマニュアル固定。三脚に数千円の微動雲台を取り付けると、移動する月を中央に収めておくのが楽。
Nikon1 J5 810mm f5.6  ISO200 1/200s

 流石に1枚撮っただけだと、大気のせいでクレーターが眠い状態だ。 しかし連写機能を使い、数十枚撮影した画像をスタックし、Registax6でWavelet変換をかけると、月のクレーターを炙り出すことができる。

Wavelet処理前 月だけを拡大したもの
処理後 (20枚スタック)

Ryzen5のコアをぶん回して出てきた超解像画像を見ると、かなりクレーターが浮き上っている。
特に色にじみなどもみえない。

1インチセンサで画面一杯に月を撮るには、焦点距離が1000mmくらい必要になる。 コンパクトなマクストフカセグレン鏡筒が視野に入ってくるが、撮影に当たっては良い架台も欲しくなり、性能向上要求は果てがないように見える。
 設置も撤収も持ち運びも楽な今の構成のままで楽しみたいところだが…

1Nikkor 18.5mm

標準画角でf1.8と明るく、描写性能の高さに定評がある単焦点レンズ。
樽収差も少なくけっこう寄れるので、ブツ撮りに適している。
卓上で基板の全景写真の撮影によく使用している。

Nikon1 J5 換算50mm f3.2 ISO160 1/6400 

Nikon1 J5 換算50mm F2.8 ISO800 1/25秒 

1Nikkor 6.7-13mm

換算18mm-35mmの超広角レンズ

 歩きながら景色を撮るのに最高なレンズ。 建築写真、現場作業記録にも強い。

Nikon1 J5 換算18mm F4 ISO160 1/1000秒 

Nikon1 J5 換算18mm f3.5 ISO160  1/1600

Popular posts

Arduino Nano Everyを試す

 秋月で売っていたAtmega8と、感光基板でエッチングしたArduino互換ボードを製作してみて、次に本家ボードも買って…  と気が付いたら10年が経過していた。  ハードウェア的な観点では、今は32bitMCUの低価格化、高性能化、低消費電力化が著しい。動作周波数も100MHz超えが当たり前で、30mA程度しか消費しない。  動作電圧範囲が広く、単純な8ビットMCUが不要になることはまだないだろうけど、クラシックなAVRマイコンは値上がりしており、価格競争力は無くなりつつある。 そしてコモディティ化により、公式ボードでは不可能な値付けの安価な互換ボードがたいていの需要を満たすようになってしまった。     Arduino Nano Every https://store.arduino.cc/usa/nano-every https://www.arduino.cc/en/Guide/NANOEvery  そんな中、Arduino本家がリリースした新しいNanoボードの一つ。  他のボード2種はATSAMD21(Cortex-M0+)と無線モジュールを搭載したArduino zero(生産終了済み)ベースのIoT向けボードだが、 Nano EveryはWifi Rev2と同じくAtmega4809を採用していて、安価で5V単電源な8ビットAVRボードだ。  Atmega4809はATmegaと名がついているが、アーキテクチャはXMEGAベースとなり、クラシックAVRとの間にレジスタレベルの互換性は無い。   https://blog.kemushicomputer.com/2018/08/megaavr0.html  もちろん、ArduinoとしてはArduinoAPIのみで記述されたスケッチやライブラリは普通に動作するし、Nano Every用のボードオプションとして、I/Oレジスタ操作についてはAPIでエミュレーションするコンパイルオプション(328Pモード)がある。 公式のMegaAVR0ボードはどれもブートローダーを使わず、オンボードデバッガで直接書き込みを行っている。  ボードを観察してみると、プログラマ・USBCDCとしてATSAMD21が搭載されている(中央の四角いQFNパッケージ)MCU的にはnEDBG

ATmega4809(megaAVR0)を試す

megaAVR 0という新しいAVRシリーズを試してみた。  小さいパッケージなのに、UARTが4本もあるのが気になったのがきっかけ。 登場すると噂の Arduino Uno Wifi rev2  にも採用されるらしい。  簡単にデータシートを眺めてみると、アーキテクチャはXmegaシリーズを簡素化し、動作電圧範囲を広げたもののようだ。  CPUの命令セットはAVRxtと新しくなっているが、Xmegaで拡張された一部の命令(DESやUSBで使われる命令)が削除されていて、基本的に今までのATmegaとほぼ同じだ。  コンパイラからは、先に登場した新しいtinyAVR0, tinyAVR1シリーズと共にAVR8Xと呼ばれて区別されている。  CPU周りを見てみると、割り込みレベルなど、今までのクラシックなATmegaで足りないなと思っていたものがかなり強化されていた。 ArduinoAPIを再実装するとしたら便利そうなペリフェラルもだいたい揃っている。 データシート P6  DMAは無いけれど、周辺機能にイベント駆動用の割り込みネットワークが張り巡らされているのがわかる。  できるだけCPUを介在させない使い方がいろいろ提案されているので、アプリケーションノートやマニュアルを読み込むことになる。 ピックアップした特徴 ・データメモリ空間(64kB)に統合されたFlashROMとEEPROM ・RAM 6kB ROM 最大48kB (メモリ空間制限のため) ・デバッグ専用の端子 UPDIを搭載 ・優先度付きの割り込み(NMIと2レベル) ・ピン単位の割り込み(かなり複雑になった) ・リセットコントローラ(ソフトウェアリセット用レジスタが実装され、リセット原因が何だったかもリセット後に読み出せるようになった) ・豊富な16ビットタイマ(4809では5基) ・16ビット リアルタイムカウンタ(RTC) ・豊富な非同期シリアル/同期シリアル(USART 4ch、SPI 1ch,TWI 1ch) ・内蔵クロックは最高20MHz(PLL)と32kHzの2種類。外部クロックは発振器と時計用水晶のみ ・ADCは10bit 16ch ・内蔵VREF電圧が5種類と多い(0.55V,1.1V,1.5V.2.5V.4.3V

GPSアンテナをつくる

GPSアンテナを作ってみた。 1575MHzの波長は約19cmなので、半波長で9.5cmとなる。 GHz帯とはいえ、結構長いものだなぁ。 セラミック等の誘電体がなければ、平面アンテナで真面目に半波長アンテナを作ろうとすると手のひらサイズの面積が必要になってしまう。 普通のダイポールだと指向性があるので、交差させてクロスダイポールにする。 屋外地上局のアマチュア衛星用アンテナの設計をそのまま縮小したもの。 水平パターンはややいびつ 92.2mmの真鍮の針金(Φ=0.5mmくらい)を2本用意して、42.3mmで90°に曲げる。 長さの同じ素子同士を並べて配置する。 (全長が半波長より長い素子と短い素子が交差した状態) 片方をアンテナ信号線、もう片方をGNDにつなげば完成。 実際5分くらいでつくったけれど、果たしてどうだろうか。 今回は、道具箱に眠っていた表面実装タイプのMT3339系モジュールに取り付けた。 アンテナはもともと3x1.2mm程度のとても小さいチップアンテナで、 LNAが入っているけど感度が悪かったのでお蔵入りしていた代物。 最近の携帯機器はみなアンテナに厳しい。 さて・・・ クロスダイポール版モジュールをPCでモニタしたウインドウ(左)と、QZ-Rader画面 東側に建物遮蔽があるので、そちら側の衛星はSNが悪い。 とりあえず補足できた衛星数はシミュレーションされたものとほぼおなじだった。 アンテナの角度をいろいろ振って、逆さまにしてもロストすることはなかった。 セラミックのパッチアンテナレベルにはなったかな・・・。 簡単にできてそれなりに測位するけれど、携帯性は皆無になった。 あと、近接周波数の干渉を受けやすいかもしれない。 GPSアンテナのDIY例としては、QFHアンテナもある。 ラジオゾンデなどで使われている例がある。 いつもお世話になっているQFHアンテナ計算シートのサイト https://www.jcoppens.com/ant/qfh/fotos_gps.en.php ヘリカルアンテナは加工精度の難易度が上がるので、今回はクロスダイポールにした。 GNSSとなると、複数の周波数のために調整されているセラミックパッチアンテナが有利だと思う。 セラミックパッチア

人工衛星の住む軌道 (とKSP)

相乗り衛星の軌道を、Kerbal Space Programで再現してみた。 現実の軌道をいくつかシミュレートしてみる。  衛星の行き先は、わりと限られた範囲に集中している。 低軌道(300~400km)  CubeSat級の衛星にはHotな軌道。 わずかに存在する気体分子や電離した原子が抵抗となるため、半年ほどで大気圏に再突入してしまうが、それゆえデブリ化の危険がほとんどない。 断面積と重量により、軌道寿命の差が極端にひらく。 基本的には地球の影に定期的はいることもあり、電力収支、熱環境共に厳しい。  投入手段: ISSからの放出、低軌道観測衛星への相乗り。 最近はISSに直接装置を設置する例も増えてきた。 極軌道(太陽同期軌道)(600~1000km)   観測衛星の天国。 軌道傾斜角が赤道と直行するような軌道。 特に太陽同期軌道では数日~数週毎に同じ地点の上空を通過するため、地表をまんべんなく安定した条件で観察できる。  太陽と軌道円の角度によっては、数週間~数ヶ月は日照状態が続くので電力不足に陥りにくい。  初期のCubeSatをはじめ、数十キロ級のマイクロサットなどが数多く投入され、今も投入されている軌道。  ただし、軌道が高くなるにつれ軌道寿命が延びることになる。 多くの衛星が周回していることもあり、長い軌道寿命の中で、交差、衝突する可能性が無視できなくなりつつある。 現在ではデブリ化を防ぐための取り組みがはじまっている。 参考文献: http://www.spacenews.com/article/civil-space/4207665th-international-astronautical-congress-cubesat-revolution-spotty 楕円軌道(数百~数千km)  宇宙開発初期のロケットで多かった軌道。 モルニア軌道を除くと利用例は少ない。静止軌道へ投入される主衛星との相乗りで、トランスファ軌道で放出されるものは存在していた。  投入例としては、アマチュア衛星( Phase-3シリーズ )がある。 かつては数基のアマチュア衛星で、地球をカバーして通信しようという計画があった。  近地点が数百kmだと、ヴァン・アレン帯を毎回横切ることになり、荷電粒子によって電子機器や太陽