ソニー製の1/2.3型 12Mピクセルのセンサモジュール(High Quality Camera)がPi Cameraのラインナップに加わった。
個人的に手持ちの産業用ズームレンズを評価するのにちょうどよさそうなので入手してみた。 背景としてはCマウントレンズがガラクタ箱の中でなぜか増殖しており、我に返ってみれば、Cマウントレンズ沼の中に膝まで浸かっているのだった。
1/2.3型といえばハイエンドスマートフォンでもおなじみのフォーマットだけれど、フルサイズ比で倍率は約5.6倍となる。同じ画を撮るための焦点距離が短くて済む利点がある。OlympusのTGシリーズや、Nikonの超望遠コンデジなど尖った製品も多い。
カメラとして、このクラスのセンサでレンズ遊びをするなら、中古市場でPentax Qシリーズを手に入れて、各種マウントアダプタを漁るほうが満足度は高いかもしれない。
センサ基板はしっかりした金属製マウントに取り付けられている。三脚穴もついておりテストしやすい。バックフォーカス調節リングが取り付けられており、Cマウントレンズ毎にバラついている無限遠点を微調整して合わせることができる。単焦点レンズでは不要なこともあるけれど、特にズーム機構を持つレンズではフォーカスリングの表示と一致させる調整が必須となり、マウントだけでもかなりの価値がある。
バックフォーカス調節リングは、マウント上のマイナスネジを緩めて、すこしテンションが無いと動き始めないので注意。
IRカットフィルタもついているが、これはユーザーが取り外すこともできるようになっている。ただし外すと保証は受けられないようだ。
基板とマウントは低粘着シートを介して封止してあり、光と埃等の侵入を防いでいる。
基板とマウントのネジはシリコーンスペーサだけで固定されているため、レンズの荷重を基板側のネジ穴で支える構造はやめたほうがよい。
カメラシステムの作成
個人的には屋外のRaspi地上局に接続して、星空を連続撮影する全天撮影カメラにしてみたいが、まずは使い勝手の良い実験用システムの構築が必要だ。
今回は手持ちのPi zero Wをベースに、ワンチップLinux時代のネットワークカメラとして使い勝手を考えてみた。 3Dプリンタでフレーム部品を印刷し、ジュラコンスペーサを継いで組み上げる。一年前にも、まったく同じようなことをやっていた
底面5センチ角の直方体として、Pi zeroを入れたケースを中央と後部の底面板にはめる形で固定する。これでUSBケーブルで給電するだけで、Wifi経由で操作できる軽量なレンズ交換式カメラモジュールとなった。空いた空間にモバイルバッテリを固定すれば、完全なワイヤレス動作が可能。
試しにPi zeroW上で WebRTC Native Client Momo を動作させながらテスト撮影をしてみた。この構成だと消費電力は 1.5Wほどで済む。
RaspistillではHQにおいて200秒以上の露出時間が取れるとされる。ただし、AWBとAGCが有効だと数フレーム撮影する必要があってやたらと時間がかかってしまうので、AWBとAGCを無効化してから撮影するように書いてある。
産業用レンズによる画像作例
冒頭の写真は、Cマウントのレンズとして、中古で入手していたSpacecom社の手動ズーム・フォーカスレンズ(16~100㎜)を取り付けたもの。
1インチセンサ機用のレンズだが、1/2.3型センサを取り付けて、35㎜換算するとだいたい128~800㎜のズームレンズとなる。金属製でずっしりとした重さがある。
絞り解放は明るいけれど、代わりに焦点出しにものすごい苦労する。 ズームレンズがF5.6になる理由が分かってくる。このレンズの真価は、望遠端でレンズ前1mにピントが合うこと。FA向けだけあって、超望遠マクロとして、ワーキングディスタンスを確保しながら拡大撮影する用途にも使える。
1mの距離から撮影したもの。
マクロで基板写真を撮ったもの。
遠くの基地局アンテナ
簡易HDMIカメラとして
RaspberryPiのHDMI出力を、最近数千円ほどで安価に出回っているUSB接続のHDMIキャプチャにつなぐことで、モニタを直接用意せずにFullHDのUSBカメラとして運用することもできる。 このドングルはUVCデバイスとして認識されるため、特別なドライバ等は必要ないのが利点。