スキップしてメイン コンテンツに移動

UNO R4 Minimaの仕様を眺める

CANバス内蔵Classicボードたち。 しかし割高になってしまった…

Uno R4 Minimaを入手したので遊びつつ、どのような実装になっているのか、仕様を眺めてみた。

UNOは現在のArduino製品の中ではClassic Familyというカテゴリに入っており、歴史的なフォームファクタを継承している。ルネサス製MCUの採用で話題だけれど、5V単電源動作可能なARMマイコンとしては高機能だ。

要点としては、初学者向けのClassicファミリにCortex-M4が降りてきて、内蔵RTC、DAC出力、CANバスといった機能にもAPIレベルで対応しているという点になる。

 スペックだけ見ると、反射的に3.3Vで動いてほしいとかいろいろ要望が湧いてくるが、ターゲットはあくまで初心者なのを忘れないようにする。 (いい感じの互換ボードに期待)

ボードとピンマップを眺める

公式サイトのボード紹介ページでは、回路図と基板図をAltium365ビューワーで見ることができるようになっていた。回路図で抵抗を選択すると詳細が表示されるし、基板図上の実装と連携して位置をハイライトできたりする。

Minimaの実際の基板には16MHzの水晶は空きパターンとなっている。内蔵オシレーターで動いているようだ。

Minima 回路図
https://docs.arduino.cc/resources/schematics/ABX00080-schematics.pdf

Wifi R4回路図
https://docs.arduino.cc/resources/schematics/ABX00087-schematics.pdf

MinimaとWifi R4ではソケットに引き出されたSPIバスのマッピングが異なっている。これに伴いCANで使うピンも位置が変わっている。APIが用意されてるのにピンマップ表で表記していないのはボード依存のためかもしれない。 CANを使いたければシールド設計で対処するしかなさそう。

 他にも、Minimaのソケットの3.3V出力は、Minimaのデータシートに書いてある通りMCUの内部電圧を生成しているLDOの出力を引き出している。そこまでやるのかというくらい割り切っている。
 内部レギュレータから引き出せる電流量はArduinoとしては表向き載っていないけれど、ルネサスのデータシート(REN_r01ds0355ej0100_ra4m1_DST_20191008-1999414.pdf P.86 Table2.41)を見る限り100mAが限度となっており注意が必要。プロトタイピング用のボードとしてはちょっと心配になる。

ちなみにWifiR4はESP32があるため、さすがに外付けのレギュレータがある。

Minimaはコストダウンのためか、抵抗についても値をなるだけ共通化していて興味深い。プルアップ抵抗についても、USB-TypeCのCCに使う5.1kΩにそろえているようだ。

Pins_Arduino.hを眺める

Arduinoボード毎のペリフェラルの差異を記述するPins_Arduino.hを見ると、このボード設計の差異をどう吸収しているかが見えてくる。これはArduinoCore-renesas/variants/各ボード名/直下に置いてある。

WifiモデルとMinimaでPins_Arduino.hを見比べると、UARTの数が異なっている。

USB ポートはCDCなので、ハードウェアUARTは4ポート存在する。ただし、Minimaでは1chのみが定義され、Uno WifiではESP32との通信に2chが追加されている。

Minimaでは残り二つが使えないかというと、SPIバスのピンと被るものが1ch、ハーフピッチのSWD用ピンヘッダの片隅に1ch引き出してあった。

謎の5V分圧抵抗 二つのボードで共通して実装されている5Vを分圧する謎の入力。ADCに繋いでいる?ぽいので調べてみると怪しい定義を見つけた。

https://github.com/arduino/ArduinoCore-renesas/blob/149f78b6490ccbafeb420f68919c381a5bdb6e21/variants/MINIMA/pins_arduino.h#L134

ここを見るとAVCC_MEASURE_PINが、計算用の係数とともに定義されている。

ADC入力関係っぽいなと思ってAPI関連のanalog.cppを見に行くとデフォルトの電圧リファレンスを計算する値として使っており。分圧抵抗もDCDCの設定抵抗を流用しているので係数で補正しているのだろうか。

https://github.com/arduino/ArduinoCore-renesas/blob/149f78b6490ccbafeb420f68919c381a5bdb6e21/cores/arduino/analog.cpp#L558

ただ、代入された20という数値がADC番号だとすると、謎分圧入力はADC16につながっているので合わない。(裏でマッピングしてたりする?)

互換性と利便性の狭間

 5V対応自体は互換性のためだけど、今日日センサ系は3.3Vがデファクトになっているので、初学者はいきなり分圧回路に直面する。 
 それも必要な過程かもしれない。UARTの入出力における視座の獲得と共に…。

 UNO Wifi R4はLEDのドットマトリクスに目が行きがちだけど、よく見るとSparkfunのQuiic互換コネクタが生えている。Classicファミリユーザーの大半はプロトタイピングでの接続先はジャンパ線とブレッドボードだとおもうし、シールド基板で拡張するという概念に囚われずにいろいろなセンサをつないで遊ぶのであれば正しい。
 

 3.3V駆動は可能か

 電圧範囲的には3.3Vでも問題なく動作するはず。
そう思ってUSBを接続せず、電源装置で3.3Vを給電してみると、ギリギリ動いているが電流値が増えて挙動が安定していない。BOR設定などが働いているのだろうか。

 回路的に電源部の電圧を弄ろうとしたら、USB5VをDCDCの入力側にダイオードORで繋ぎ、データシートを見ながら、電圧設定の抵抗値を変更すれば実現できる。 若干改造が必要なのと、USBの挙動に関して5V入力の整理と、電圧範囲をソフトウェア的にどう扱っているのか調べる必要がある。

 5Vのままであれば、既存のモーター系シールドなどが使えそうなので、CANバスを有効化してみようと思う。

Popular posts

【サボテン】太陽電池の結線

 久しぶりにサボテン計画。 忙しかったり投薬治療直前でだるかったりして、かなり放置していた。 さぼてんも不機嫌そうだ。 せっかくなので、園芸用の水受けに移す。  関節痛で寝込んでる間に、エイプリルフール終わってましたね^^・・・。  太陽電池の展開機構を想像したが、まずは太陽電池の結線を済ませよう。  配線を綺麗にまとめたくていろいろ探していたら、千石電商でぴったりなものを見つけた。 LEDリング基板 というらしい http://www.led-paradise.com/product/629?  本来はチップLEDをリング状にまとめる代物。 イレギュラーな使い道だ。   今度は小径のを買って、GX200のリングライトに仕立て上げよう。   嬉しいことにフレーム径にジャストフィット。 配線を綺麗にまとめられた。   太陽電池の接続部。逆流防止用にショットキーダイオードを入れている。 かなりスッキリ。 蛍光灯下 500ルクスでの実験。 EDLCは10Fを使用。  ちゃんと充電が行われている。 といっても、とてもとてもゆっくりとだけれど・・・。

Arduino Nano Everyを試す

 秋月で売っていたAtmega8と、感光基板でエッチングしたArduino互換ボードを製作してみて、次に本家ボードも買って…  と気が付いたら10年が経過していた。  ハードウェア的な観点では、今は32bitMCUの低価格化、高性能化、低消費電力化が著しい。動作周波数も100MHz超えが当たり前で、30mA程度しか消費しない。  動作電圧範囲が広く、単純な8ビットMCUが不要になることはまだないだろうけど、クラシックなAVRマイコンは値上がりしており、価格競争力は無くなりつつある。 そしてコモディティ化により、公式ボードでは不可能な値付けの安価な互換ボードがたいていの需要を満たすようになってしまった。     Arduino Nano Every https://store.arduino.cc/usa/nano-every https://www.arduino.cc/en/Guide/NANOEvery  そんな中、Arduino本家がリリースした新しいNanoボードの一つ。  他のボード2種はATSAMD21(Cortex-M0+)と無線モジュールを搭載したArduino zero(生産終了済み)ベースのIoT向けボードだが、 Nano EveryはWifi Rev2と同じくAtmega4809を採用していて、安価で5V単電源な8ビットAVRボードだ。  Atmega4809はATmegaと名がついているが、アーキテクチャはXMEGAベースとなり、クラシックAVRとの間にレジスタレベルの互換性は無い。   https://blog.kemushicomputer.com/2018/08/megaavr0.html  もちろん、ArduinoとしてはArduinoAPIのみで記述されたスケッチやライブラリは普通に動作するし、Nano Every用のボードオプションとして、I/Oレジスタ操作についてはAPIでエミュレーションするコンパイルオプション(328Pモード)がある。 公式のMegaAVR0ボードはどれもブートローダーを使わず、オンボードデバッガで直接書き込みを行っている。  ボードを観察...

ATmega4809(megaAVR0)を試す

megaAVR 0という新しいAVRシリーズを試してみた。  小さいパッケージなのに、UARTが4本もあるのが気になったのがきっかけ。 登場すると噂の Arduino Uno Wifi rev2  にも採用されるらしい。  簡単にデータシートを眺めてみると、アーキテクチャはXmegaシリーズを簡素化し、動作電圧範囲を広げたもののようだ。  CPUの命令セットはAVRxtと新しくなっているが、Xmegaで拡張された一部の命令(DESやUSBで使われる命令)が削除されていて、基本的に今までのATmegaとほぼ同じだ。  コンパイラからは、先に登場した新しいtinyAVR0, tinyAVR1シリーズと共にAVR8Xと呼ばれて区別されている。  CPU周りを見てみると、割り込みレベルなど、今までのクラシックなATmegaで足りないなと思っていたものがかなり強化されていた。 ArduinoAPIを再実装するとしたら便利そうなペリフェラルもだいたい揃っている。 データシート P6  DMAは無いけれど、周辺機能にイベント駆動用の割り込みネットワークが張り巡らされているのがわかる。  できるだけCPUを介在させない使い方がいろいろ提案されているので、アプリケーションノートやマニュアルを読み込むことになる。 ピックアップした特徴 ・データメモリ空間(64kB)に統合されたFlashROMとEEPROM ・RAM 6kB ROM 最大48kB (メモリ空間制限のため) ・デバッグ専用の端子 UPDIを搭載 ・優先度付きの割り込み(NMIと2レベル) ・ピン単位の割り込み(かなり複雑になった) ・リセットコントローラ(ソフトウェアリセット用レジスタが実装され、リセット原因が何だったかもリセット後に読み出せるようになった) ・豊富な16ビットタイマ(4809では5基) ・16ビット リアルタイムカウンタ(RTC) ・豊富な非同期シリアル/同期シリアル(USART 4ch、SPI 1ch,TWI 1ch) ・内蔵クロックは最高20MHz(PLL)と32kHzの2種類。外部クロックは発振器と時計用水晶のみ ・ADCは10bit 16ch...

GPSアンテナをつくる

GPSアンテナを作ってみた。 1575MHzの波長は約19cmなので、半波長で9.5cmとなる。 GHz帯とはいえ、結構長いものだなぁ。 セラミック等の誘電体がなければ、平面アンテナで真面目に半波長アンテナを作ろうとすると手のひらサイズの面積が必要になってしまう。 普通のダイポールだと指向性があるので、交差させてクロスダイポールにする。 屋外地上局のアマチュア衛星用アンテナの設計をそのまま縮小したもの。 水平パターンはややいびつ 92.2mmの真鍮の針金(Φ=0.5mmくらい)を2本用意して、42.3mmで90°に曲げる。 長さの同じ素子同士を並べて配置する。 (全長が半波長より長い素子と短い素子が交差した状態) 片方をアンテナ信号線、もう片方をGNDにつなげば完成。 実際5分くらいでつくったけれど、果たしてどうだろうか。 今回は、道具箱に眠っていた表面実装タイプのMT3339系モジュールに取り付けた。 アンテナはもともと3x1.2mm程度のとても小さいチップアンテナで、 LNAが入っているけど感度が悪かったのでお蔵入りしていた代物。 最近の携帯機器はみなアンテナに厳しい。 さて・・・ クロスダイポール版モジュールをPCでモニタしたウインドウ(左)と、QZ-Rader画面 東側に建物遮蔽があるので、そちら側の衛星はSNが悪い。 とりあえず補足できた衛星数はシミュレーションされたものとほぼおなじだった。 アンテナの角度をいろいろ振って、逆さまにしてもロストすることはなかった。 セラミックのパッチアンテナレベルにはなったかな・・・。 簡単にできてそれなりに測位するけれど、携帯性は皆無になった。 あと、近接周波数の干渉を受けやすいかもしれない。 GPSアンテナのDIY例としては、QFHアンテナもある。 ラジオゾンデなどで使われている例がある。 いつもお世話になっているQFHアンテナ計算シートのサイト https://www.jcoppens.com/ant/qfh/fotos_gps.en.php ヘリカルアンテナは加工精度の難易度が上がるので、今回はクロスダイポールにした。 GNSSとなると、複数の周波数のために調整されているセラミックパッチアンテナが有利だと思う。 セラミックパッチア...