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メモリ液晶を試す

スマートウォッチブームで、小型で省電力なディスプレイが注目されている。 このうち、割と入手しやすいものにシャープのメモリ液晶がある。 有名どころではPebbleが採用しているものだ。 Memory in pixcel という仕組みで、画面更新頻度を大幅に落とすことができるモノクロ液晶である。  (表示を維持するためにはわずかだが電力は必要で、電子ペーパーとは異なる)

参考 :メモリ液晶ディスプレイの構成と特徴  http://www.sharp.co.jp/corporate/rd/35/pdf/100_06_A4.pdf

今回、2タイプの液晶を取り寄せて比較してみた。 (Mouser)

LS013B4DN04 96x96  ドットピッチ:0.252mm  画面保持6uW、1Hz更新 12uW  @3V
LS013B7DH03 128x128 ドットピッチ0.18mm  画面保持50uW 1Hz更新 130uW @3V

※数値はデータシートより抜粋
  • 96x96画素のものはPNLC(/散乱型液晶)とあり、液晶層は下層の鏡面を透過/不透過することでピクセルを構成している。完全に透過にすると鏡となる。 動作中に電源を切り離すと、画面は徐々に不透過に戻っていった。
  • 128x128画素のものは後発のHR-TFT型で、視認性の高い黒いピクセルだ。ディスプレイ自体も薄くなっている。電源を断つと、表示はすぐ消える。

L: 96x96 PNLC                        R:128x128 HR-TFT

PNLCタイプはガラス基板の配線が直接観察できて綺麗だ。
96x96の液晶は、MSP430LaunchPad向けの拡張基板で、Sharp ® Memory LCD BoosterPack として入手することができる http://www.ti.com/tool/430boost-sharp96

この拡張基板を使えば、いろいろなメモリ液晶の評価が簡単にできるようになっている。 5V系大型ディスプレイ用にDC/DCが実装されていて、抵抗ジャンパの設定で有効化できる。秋月で販売されている2.7インチのHR-TFT http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-04944/ タイプも動かせるはず。

その他に、Adafruitからブレイクアウト基板がでている。http://www.adafruit.com/products/1393

PNLCタイプは、Pebbleと同時期に登場したMetawatchという製品に採用されていた。 ネットのレビュー記事を見返すと、反射で見づらいという記述がたくさん見られる。
中身がMSP430なため、TIの開発環境でファームウェアが開発できるようになっており、今もTIから開発キットとして販売されてるようだ。

表示してみる



96x96での表示を試してみたところ。 Energia IDEを使い、MSP430
SHARPMemLCDTxtというライブラリを使用した。


同じライブラリを、128x128用に修正してみたもの。制御は共通なので、画面定義のみを変えた。画素数とHR-TFTのコントラストがよくわかる。

なお、Energia IDE 0101E0014からは、MSP430FR5969 LaunchPad(2.0)がトラブル無く自由に書き込みができるようになった。 サンプルスケッチにもメモリ液晶のライブラリが入っているので、すぐ試すことができる。 (※0012から同梱された)

まとめ

  • PNLCは、ピクセルが鏡面反射するため、外光と角度によってはコントラストが低下する。 メリットは、HR-TFTよりもかなり省電力なこと。
  • HR-TFTは、コントラストが高く文字表示に適している。 

最近、RGBに対応したメモリ液晶が次々と発表されていて、駆動方式も同等なので割と面白そう。ただ、階調とコントラストがやや落ちてる雰囲気だ。

 個人的にメモリ液晶を使って、FRAMマイコンとセンサを搭載した回路を試作中。


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