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ウォルターの亀の子孫たち


 時は2015年。ロボット掃除機も普通にリサイクルショップに平積みされる時代。

 真の名は自動掃除機。 掃除の定義を集塵に絞り、ダストボックスの中身は人間が廃棄する。
まだ全自動掃除機への進化の余地を残していそうだが、それは制度や家の設計から始める必要がありそうで別の話になってしまうかも。

 立ち寄った中古屋では2~3年前のルンバが多く、ついで低価格な類似機種たち、割と希少な日本の製品と続く。 きれいな状態のものが多く、様々な家庭事情がうかがえる。

 歴史的な視点で陳列棚を見渡すと、ルンバの初代機(Discovery)の箱付き品があった。箱の側面に、ゲンギスからPacbotに至る、iRobot社の歴代のロボットたちが紹介されていて、科学教材のような雰囲気をまとっている。このあたりのいきさつは、ロドニー・ブルックスの著書に載っているのでおすすめ。(Flesh and Machines / ブルックスの知能ロボット論)

 ロボット台車としてのルンバは、DINコネクタを介してシリアル通信によるコマンド制御が可能なのだが、箱も含めてわりとデカい。
 アメリカンサイズゆえに、重くて置き場所に困りそうなので見送る。 かわりに小さめで安いロボットクリーナーをみつけた。 ツカモトエイム製 AIM-RC03というモデル。 ニトリの掃除機コーナーでよく見かける低価格機だ。 ブラシ欠品のため安く手に入った。

 仕様は、14.4Vのニッケル水素バッテリ、充電は手動。 




積みがちなボードコンピューターに足を生やすにはもってこいかもしれない。


中身の観察


足回り




 ネジ一本で止められている筺体底面の蓋を開け、モーターのケーブルを外すとギアボックスごと取り出せた。裏にサスペンション用バネがある。 とても交換修理がしやすそうだ。


ギアはウォームギア、モーターはJXD-RK370(8V 8000rpm)  370系モーター?


基板


 大きく分けて、ニッケル水素電池の充電回路、モータードライバのブロック、センサと制御マイコンがある。
マイコンっぽい石は製造元がよくわからない。

コンパレータが幾つかあり、充放電と健全性確認に使われている。

 モーター電圧はDCDCによって8Vが生成され、足回りの2つのモーター、回転ブラシ用モーター、吸気ファン用モーターに給電されている。それぞれパワートランジスタでON・OFFできるようになっていて、床が検出できない状態などが続くと、モーターは止まるようになっている。

走行モーターはパワートランジスタによるハーフブリッジ回路になっていた。

床検出用の反射センサが3つ、前部のバンパーもフォトインタラプタによる検知だ。 

放浪者

  吸引モーターとブラシのモーターを取り外して、しばらく走らせてみた。 基本的に、バンパーか段差検知が働くと、少しバックして回転し、回避行動をとる。 走行パターンは3つあり、らせん走行や障害物まで直進するバンパー走行、壁伝い走行を数分ごとに遷移する。 場当たり的ではあるが、局所解にはまって行動不能になることはほとんどない。走行パターンの遷移が脱出につながる。

 この製品は、筺体が小さめなことが有利に働いて、狭い通路もはまり込まないし、オフィスチェアーの下を器用にくぐり抜けたりする。 モーター音が静かなら、部屋の中で放し飼いにしてもいいかも…。 バンパーが物に当たる音や、吸気音、走行音が筐体から響いてしまうのがやや難点か。 

廊下を片付けて実験。 明かりを消して、 5分ほどの走行の様子を、本体のLEDの軌跡で蓄積してみた。
 1分露出を5~6枚合成している。 赤と緑のLEDが交互に点滅するので、ホタルが飛んでいるみたいだ。 光の密度でどこでたくさん滞在していたかがわかりやすい。


 壁伝いとバンパー走行の軌跡が確認できる。 らせん走行は確認できなかった。
掃除効率が床の障害物の密度に左右されるので、広いフロアは等間隔に障害物を置きたくなってくる。 自動掃除機ユーザーが部屋の最適化を図りだす動機が何となくわかり始めた。
(高級機種になるとLIDERやカメラを搭載して、環境地図をつくりながら、まんべんなく掃除できることを売りにしている)

長くなったので、改造はまた今度に。

 ウォルターの亀というのは、1950年台にグレイ・ウォルターという人が造った電気仕掛けのロボットのこと。 生物を模倣するために、単純な反応を組み合わせて複雑な行動を生成することを目的に作られている。 壁伝いに周囲をうろつき、腹がへる(バッテリ電圧が低下する)と巣に戻り、自動的に給電を受けるようになっている。
ロボット掃除機たちの祖先といえる。


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