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独立電源の実験#3 動作テスト

ガーデンプローブ
 秋は深まり、日に日に昼が短くなっていく。 ひまわり8号リアルタイムウェブをサブモニタに映し、自動更新で地球の変化を眺めながら作業している。
 静止軌道から眺めていると実感するが、電力収支を維持する上で、地上での太陽光発電は宇宙空間よりも不安定だ。
 秋分を過ぎ、もうじき冬至に向かってまた地球の影が傾いていく様子が見えるだろう。 地軸の傾きと気象により地上の日射量は大幅に変動し、 昼と夜のサイクルは12時間前後と長い。
 今年は曇ってばかりだった・・・。
 地上での平均的な発電量は、地球の公転軌道上の1割ちょっとまで落ちてしまう。
 もうちょっと太陽系視点で見てみると、太陽定数が1割ちょっとまで落ちるというのは、火星以遠の小惑星帯の公転軌道まで遠ざかるのと同じだ。

 さて、デジタルサボテンこと独立電源システムもある程度インターフェースが生えそろってきた。 近距離のハウスキーピングデータとコマンドの送受信のために、TWE-Liteを内蔵し、GPS、長距離ビーコン用とあわせて、3種類のアンテナが搭載されている。
単3電池駆動タイプも用意
 地上で連続して安定稼働させる場合、1日分の充電で数日間稼働できる要求仕様がベースラインになる。 その観点からしたら、このサイズでは高負荷のタスクは昼間だけという中途半端な位置付けになる。  試験機としては、蓄電系が小さくシンプルなほうがやりやすい。

 ソフトウェアによる電力管理の試運転で、2日ほど透明な保存容器に入れて密封し、窓の外に放置してみた。
太陽電池は300mW出力のものを1枚だけ取り付けている。
下記のグラフは受信したデータから電圧履歴と動作モード遷移を抜き出したもの。

 天候は1日目の昼間は曇り。 夜は雨だった。 二日目の昼は快晴。
建物の北西側に設置しているため、午後までは直射日光が当たらない。

 小容量のほうは日照状態で電圧がかなり左右される。 副作用として2つのキャパシタ間の電圧比較だけで太陽光発電中かどうか判断できる。

 動作モードは4つ用意した。
  1. 大容量キャパシタの充放電系統切り離し、小容量キャパシタ駆動モード。 (完全放電からの復活)
  2. 大容量キャパシタ初期充電モード、放電なし(HK送信開始)
  3. 大容量キャパシタ駆動開始、省電力モード。 
  4. 通常運用(規定電圧以上で、 測位などを許可)
 動作モードは始動と通常運用の2つの段階がある。 ブートストラップ用の小容量キャパシタは大容量キャパシタの放電を開始した段階で状態遷移フラグから無視する。
 大容量キャパシタの電力がマイコンの下限電圧を下回るまでは、3と4を行き来している。

 省電力モードなら、曇り空程度でも電力収支が成り立っている。 余裕を考えると、パネルは2枚にして、0.5W以上あるほうがよさそうだ。

 夜間の電圧カーブを見ると、平均500μA程度で動作しているように見える。
OBC-644基板上の周辺機器の省電力をまだ極めていないので、最終的に100μA程度までは減らせると思う。

 モード4の間は10分おきにGPSの電源を入れ、測位を行っている。コールドスタートでは測位に40秒ほどかかるけど、バックアップ電源端子には常時給電しているので、次回以降はホットスタートを行い、測位時間を数秒まで短縮できる。  

 ATmegaを1.8Vまで駆動できるようにしたので、だいぶ稼働時間を伸ばせた。
 キャパシタを5.5Vから1.8Vまで使うと、静電容量180クーロンになり、約50mAhの電池で動いているのに等しい。  4V止まりだと6割どまりで、せっかくの容量を活かせない。

容量を稼ぐには、快晴時は簡易的にMPPT動作を行い、昇圧させてキャパシタをフル充電まで持っていく仕組みが必要になるだろう。  さらにオンボードで電圧履歴をもたせ、もっと動的な動作モード配分も・・・。


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