天頂を通過するISS 380km分の航跡が写っている |
国際宇宙ステーション(ISS) の可視パスを撮り始めた。
仰角が80°を超える好条件では、天頂付近でマイナス4等星近くまで明るくなる。
人々の暮らしの頭上を人類の宇宙基地が音もなく渡っていく。 第一宇宙速度で移動しているにもかかわらず、400㎞も離れると見かけの移動速度は航空機に近い。
参考:ISSの可視パスを出してくれる便利なサイト https://www.heavens-above.com
可視パスでフィルタをかけ、予報の中で仰角が50度を超える好条件な日を狙うと良い。
三脚に設置したカメラでこの軌跡を撮るにはいくつか方法があるけれど、お手軽なコンポジット撮影を試みた。
Nikon1 J5に1 Nikkor 6.7-13mmを付けて待ち構える。
この機種ではインターバルは最短で5秒、インターバルが遅延しない最大の露出時間は2.5秒となる。 換算18mmだと地平線から天頂までを映せるので、到来方向の空にカメラを向け固定し、撮影してみた。
撮影後は比較明合成をして完成。
11月21日
最初の撮影は光害カットフィルタ(kenko スターリーナイト)のみでの撮影。急いだためピント出しに失敗したが、明るい点光源が強調され、ソフトフィルターと同じ効果をもたらした。拡大しなければ問題ない
1月21日
プロソフトンAを入手したのでピントを出してから撮影。時刻的にはほぼ同一なのに、季節変化で空が明るくなっているのが分かる。
2回のパスを比較すると以下のようになる(Orbitronを使い、当時の軌道元期で比較)。 1月のパス軌跡がかなりまっすぐ。
軌道の途中から赤い線になるのは、地球の影に入ったということ。 この日は天頂通過後に日陰に突入した。 直前、ISSの反射光が夕焼け色に赤く変わり、あっという間に消えていった。低軌道衛星の夕焼けは短い。
合成した画像の個々の破線は、2.5秒間にISSが移動した距離も表している。軌道速度は秒速7.66kmだから、露光する間にISSは約19㎞移動している。
眼で追う場合、地平線近くで識別するのは至難の業だ。都市部なので、仰角が40度を超え、輝度がマイナス等級に達するあたりから周囲の星よりも目立ちはじめて気が付きはじめる。
1月のパスで破線を数えてみると、地平線近くは太陽光の名残りで明るく識別できないが、45個の破線を確認できた。天頂まで写したコンポジット画像には差し渡し1723kmの軌道が写っていることになる。
この日も肉眼ではっきりと視認できたのは、ISSの仰角が金星を超え、距離が800㎞を切ったあたりからだった。
おまけ ISSの軌道高度変化(5年分)
ここ5年間の軌道要素から高度変化を算出して見てみると、高度410㎞前後に維持されている。