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新春マクロ撮影テスト


2022年に投稿するのをすっかり忘れていたら2023年になっていた。ということで今年もよろしくおねがいします。

主題としては、手元のマクロ撮影機材を比較する話。デジタル一眼レフとしてK-70を導入して数年になるが、最近ようやく標準ズームレンズ以外のレンズとしてHD PENTAX DA のマクロレンズ 35mmF2.8 Macro Limitedを入手。 

 マクロ撮影の領域については、Olympus TG-5でほぼ網羅されている。ほぼというのは、手軽さを追求した結果であり、一眼で真面目にマクロ撮影をしてこなかったという背景がある。一眼のキットレンズでも数十センチ離せば基板写真は撮れるので、画質の必要な用途でも棲み分けができていた。
  iPhone13proもマクロ撮影が可能だが、こちらは普段あまり使っていないので比較に加えた。

テスト撮影の被写体として、Arduino Dueを使う。適度に大きく、背の高い部品が生えていて、シルク印刷のエッジが出ているので比較には持ってこいだ。 (市場では物凄い値段になってしまっているけれど)

基板全体を撮影する

HD DA Macroは端までピントを出すためF8くらいまで絞った。TG-5も画角50mm相当で撮影する。iPhone13proは標準アプリとサードパーティアプリで撮影した。


HD DA Macro 35mm 50mm相当

TG-5 50mm相当 


iPhone13pro 26mm (Procamを使用)


iPhone13 pro 13mmクロップ状態(標準アプリ 26mm相当)


 APS-CサイズだとRAW画像の素性が良いので処理しやすい。ファインダーを覗けばピントも追いこめる。

TG-5は大抵AFで撮影しているが、実はピントが出ていない眠い画像になることが多かった。大画面で見るまで気づくのが遅れやすい。明るければいい写真が取れるし、RAW処理でノイズは目立たないレベルに持っていくことができる。

 iPhone13 proはお任せで撮ると、被写体が近ければ超広角13mm 遠ければ広角26mmを使う。Dueの基板全体を写そうとフレーミングを行うと、標準アプリ上では倍率1倍表示でも、13mmカメラをクロップして撮影しており、26mmカメラの画像と比較すると塗りのキツい絵作りになっている。

 高画質化のためにセンササイズ拡大を優先した結果、26mm広角があまり寄れなくなったことが原因だろう。
 勝手に切り替わると困るときは、サードパーティの撮影アプリを使って使用するカメラレンズを固定すると良い。この問題、同じく望遠端も暗くて手振れが多い状況では広角カメラをクロップしようとする。確かに明るいレンズを優先して、失敗写真を減らすという目的では正しいのだが…。標準アプリは十分な光量とピントの合わせやすい綺麗な風景専用と割り切ったほうがよいだろう。

最大限拡大する

マクロレンズでどこまで寄れるかは気になるところ、この3機種ともかなり寄れる。拡大率と作業性でいうと顕微鏡モードとオプションでリングライトを備えるTG-5の圧勝になるが、HD DA Macroもかなり拡大できる。ワーキングディスタンス(WD)は20mm程度あった。一眼の最短撮影距離は被写体からセンサ面まで距離の話なので戸惑う。

iPhone13 proのマクロモードはかなり寄れるが、代わりに周辺収差がすごいことになる。これは14proでは改善されたと聞く。WDは15mm程度まで寄れるが、超広角レンズは本体の真ん中寄りに配置されていて、寄るにあたって光源を遮ってしまいがちだ。

HD DA Macro 35mm 50mm相当

TG-5 100mm相当 

iPhone13 pro 13mm マクロモード

深度合成をする

奥行きのある被写体のすべての領域にピントが合った写真を撮る場合、被写界深度合成(Focus Stacking)を行う必要がある。複数の写真をソフトウェアで合成するのだが、結構手間がかかる作業だ。

TG-5で深度合成したマザボの裏1

TG-5で深度合成したマザボのCPUソケット裏のコンデンサ

TGシリーズは撮影するだけで全自動で処理してくれるという特徴があり、手軽に深度合成した写真を撮影できる。合成まで任せるか、少しずつフォーカスをずらした画像を撮ってくれるフォーカスブラケット撮影が選べる。

RAW現像ソフトのSILKYPIX Developer Studio pro10には被写界深度合成機能があるため、K-70でもピントをずらしながら撮影し、PC上でRAWを合成するという形で処理できる。

せっかく頑張ってボケる光学系になったものを台無しにするようだが、iPhoneでもアプリによってフォーカスブラケット撮影が可能なものがいくつか見つかる。デスクトップの小物くらいのサイズでは寄れないことも手伝い、効果が限定的でわかりづらい。合成まで行ってくれるものは見つからず、PC上で処理した。マクロモードのレンズ収差を補えるかと思ったけれど、限定的な効果にとどまっている。

HD DA Macro 35mm 50mm相当 F8をSILKYPIX10で5枚スタック

TG-5 被写界深度合成自動モード 80mm相当 

TG-5 RAWをフォーカスブラケット撮影 SILKYPIX10で合成

iPhone 26mmでフォーカスブラケット撮影 SILKYPIX10で合成

iPhone13pro 13mm フォーカスブラケット撮影 SILKYPIX10で合成

iPhone13pro 13㎜ 1枚のみ

一通り撮影してきて、マクロ記録撮影におけるTG-5のお手軽さを再確認した。iPhone13proでも代用できる範囲は結構広いけど、一般的なお手軽に振り切れた結果、ユースケースを外れた利用シーンでは逆に使いにくい面が目立つ。暗所撮影や解像度についてはK-70でこだわる感じで行きたい。

レンズを買ったきっかけは、Open Circuits: The Inner Beauty of Electronic Components という電子部品の図鑑に触発された面がある。下記リンクから一部の内容を閲覧できる。

https://opencircuitsbook.com/

古い電子部品やコネクタ、受動部品から最新のパッケージまで実物の構造を見せてくれる教育的な本なのでおすすめ。撮影テクニックについても解説がある。筆者は電子書籍版を買った後に物理本も買ってしまった。

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Arduino Nano Everyを試す

 秋月で売っていたAtmega8と、感光基板でエッチングしたArduino互換ボードを製作してみて、次に本家ボードも買って…  と気が付いたら10年が経過していた。  ハードウェア的な観点では、今は32bitMCUの低価格化、高性能化、低消費電力化が著しい。動作周波数も100MHz超えが当たり前で、30mA程度しか消費しない。  動作電圧範囲が広く、単純な8ビットMCUが不要になることはまだないだろうけど、クラシックなAVRマイコンは値上がりしており、価格競争力は無くなりつつある。 そしてコモディティ化により、公式ボードでは不可能な値付けの安価な互換ボードがたいていの需要を満たすようになってしまった。     Arduino Nano Every https://store.arduino.cc/usa/nano-every https://www.arduino.cc/en/Guide/NANOEvery  そんな中、Arduino本家がリリースした新しいNanoボードの一つ。  他のボード2種はATSAMD21(Cortex-M0+)と無線モジュールを搭載したArduino zero(生産終了済み)ベースのIoT向けボードだが、 Nano EveryはWifi Rev2と同じくAtmega4809を採用していて、安価で5V単電源な8ビットAVRボードだ。  Atmega4809はATmegaと名がついているが、アーキテクチャはXMEGAベースとなり、クラシックAVRとの間にレジスタレベルの互換性は無い。   https://blog.kemushicomputer.com/2018/08/megaavr0.html  もちろん、ArduinoとしてはArduinoAPIのみで記述されたスケッチやライブラリは普通に動作するし、Nano Every用のボードオプションとして、I/Oレジスタ操作についてはAPIでエミュレーションするコンパイルオプション(328Pモード)がある。 公式のMegaAVR0ボードはどれもブートローダーを使わず、オンボードデバッガで直接書き込みを行っている。  ボードを観察してみると、プログラマ・USBCDCとしてATSAMD21が搭載されている(中央の四角いQFNパッケージ)MCU的にはnEDBG

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ATmega4809(megaAVR0)を試す

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GPSアンテナをつくる

GPSアンテナを作ってみた。 1575MHzの波長は約19cmなので、半波長で9.5cmとなる。 GHz帯とはいえ、結構長いものだなぁ。 セラミック等の誘電体がなければ、平面アンテナで真面目に半波長アンテナを作ろうとすると手のひらサイズの面積が必要になってしまう。 普通のダイポールだと指向性があるので、交差させてクロスダイポールにする。 屋外地上局のアマチュア衛星用アンテナの設計をそのまま縮小したもの。 水平パターンはややいびつ 92.2mmの真鍮の針金(Φ=0.5mmくらい)を2本用意して、42.3mmで90°に曲げる。 長さの同じ素子同士を並べて配置する。 (全長が半波長より長い素子と短い素子が交差した状態) 片方をアンテナ信号線、もう片方をGNDにつなげば完成。 実際5分くらいでつくったけれど、果たしてどうだろうか。 今回は、道具箱に眠っていた表面実装タイプのMT3339系モジュールに取り付けた。 アンテナはもともと3x1.2mm程度のとても小さいチップアンテナで、 LNAが入っているけど感度が悪かったのでお蔵入りしていた代物。 最近の携帯機器はみなアンテナに厳しい。 さて・・・ クロスダイポール版モジュールをPCでモニタしたウインドウ(左)と、QZ-Rader画面 東側に建物遮蔽があるので、そちら側の衛星はSNが悪い。 とりあえず補足できた衛星数はシミュレーションされたものとほぼおなじだった。 アンテナの角度をいろいろ振って、逆さまにしてもロストすることはなかった。 セラミックのパッチアンテナレベルにはなったかな・・・。 簡単にできてそれなりに測位するけれど、携帯性は皆無になった。 あと、近接周波数の干渉を受けやすいかもしれない。 GPSアンテナのDIY例としては、QFHアンテナもある。 ラジオゾンデなどで使われている例がある。 いつもお世話になっているQFHアンテナ計算シートのサイト https://www.jcoppens.com/ant/qfh/fotos_gps.en.php ヘリカルアンテナは加工精度の難易度が上がるので、今回はクロスダイポールにした。 GNSSとなると、複数の周波数のために調整されているセラミックパッチアンテナが有利だと思う。 セラミックパッチア