スキップしてメイン コンテンツに移動

デスクトップ地球軌道

1億分の1地球儀で遊ぶ



 昨年の年末、無印良品で販売されている白地図地球義を購入した。 



 実は昭和カートン製で、けっこうしっかりした作り。
 2種類の大きさがあったが、小さな1億分の1スケール(直径約12cm)のものを購入。

一億分の1スケールだと、1mmが100kmに相当するのでわかりやすい。

 宇宙スケールで物思いにふける場合、宇宙から肉眼で地球を見るときのスケールが気になることがあった。地球儀をスケールの基準として計算してみると、1億分の1の地球近傍空間はこんな縮尺になる。

  • ISS(低軌道) 地表から4mm
  • 静止軌道 約35.7cm
  • 月 約3.8m 
  • 太陽-地球系L1 15m

 静止軌道からの眺めを机の上に再現するならちょうど良さそうだ。

机の上で、静止軌道の位置に顔を置くことで、気象衛星の視点が得られる。
両目の視差だけでも1億倍すると6千km、経度にして9度ほど離れているので、片目で見ないと本来見えないはずの地平線の向こう側を見通せてしまう。  

 地球大気は1mm以下となり、 ISSの軌道も表面からわずか4mm。 
大半の観測衛星も1cm以内の低軌道に集中している。

 地球儀に輪ゴムを張り渡すと、任意の低軌道衛星の経路を模擬できる。 輪ゴムが赤道と成す角度が軌道傾斜角だ。 なお、きちんと円形に張るのは慣れが必要だった。
 冒頭の写真ではISSの軌道傾斜角を模擬している。 

 ここはひとつ、地球近傍軌道を巡るツアー旅行に参加していると仮定し、手持ちのカメラで地球を撮る構図を体感してみた。  月着陸以前の1950年代の予想であれば、現在の通信衛星の代わりに有人の大型通信基地が置かれていた静止軌道から始める。 


 静止軌道から地球全体を撮るには、35mm換算で70mm程度の焦点距離があれば大丈夫だった。 現在でいうと3倍ズーム機能付きのコンパクトカメラがあれば、画面一杯に地球を撮影できる。
 アポロ計画の有名な地球写真"The Blue Marble(Wikipedia)" は4万5千km彼方から80mmのハッセルブラッドで撮られたらしいので、 だいたい合っているようだ。

  静止軌道の10倍、45万キロ離れた月面から地球を画面一杯に映すには、35mm換算で800mm程度の望遠レンズが必要だ。 
 視点を逆にして、普段地球の重力井戸の底から我々が見ている月を画面いっぱいに撮るには、約3000mmくらい必要とされている。 地球は月の4倍の直径を持つため、単純に4倍大きく見えるということだ。
 丸々写す必要が無いなら、怪物じみたズーム倍率は必要なく、普通に300mm程度のズームレンズがあれば良いだろう。
 大気の影響を受けないので、地球から月を狙うよりシャープな画像が得やすいと思う。 
 観光客としては、ズームして地球を撮影するよりも、極域で月面と地球を一緒のフレームに収められるスポットが人気になりそうだ。地球の満ち欠けで、短期旅行プランの料金が変動するかもしれない。

実際に800mmで撮影した地球儀画像

観測画像で遊ぶ

 高画質の定点観測画像が高頻度で配信されており、白地図を飛び越えて本物の景色を手元で再現することができる。
 GoogleEarthや、ひまわり8号リアルタイムWebを画面に表示し、画面上の地球画像の直径を定規などで測り、距離と地球直径の比率(下の数値)を掛ければ画面から離れる距離が算出できる。
  • 静止軌道 地球直径の2.81倍
  • 月 地球直径の30.1倍
  • 太陽-地球系L1 地球直径の117.7倍

iPhone8でひまわり8号リアルタイムウェブを表示させてみると、地球の直径は43mmだったので、
  • 静止軌道 約12cm
  • 月 約1.2m 
  • 太陽-地球系L1 4.9m 
ということになる。
この縮尺だと、静止軌道はちょっと近すぎるけど、月やL1からの眺めをなんとか部屋の中で再現できる。
明かりを消して、壁に置いたiPhoneをこの距離から眺めると再現度が高かった。

ラグランジュポイントからの眺め


静止軌道や月からの眺めを堪能したので、次は地球近傍空間の探査機からの眺めを模擬してみた。
 太陽-地球系L1は、地球と太陽の2体の重力の平衡点となる領域で、太陽方向、約150万kmに存在する。 反対側の位置にあるL2とともに、わずかな推力があれば地球との位置関係を保つことができる。  
 このL1を巡る軌道には、太陽観測の使命を帯びた宇宙機が数多く投入されている。 その中でも、NOAAが運用するDSCOVRは太陽と地球を同時に観測するユニークな探査機だ。搭載された地球撮像カメラ(EPIC)によって、多波長で高解像度の地球観測画像を撮影している。
配信画像のタイムラグは約1日遅れだが、1時間おきの画像を閲覧することができる。 
https://epic.gsfc.nasa.gov/

 サイトでは地球との距離のほか、太陽と地球を結んだ線と探査機のなす角(SEV angle)が確認できる。
https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/20150018272.pdf
実際にL1点に静止するのは力学的に不安定なのと、地球側のアンテナ視野に太陽が入り込み、太陽電波で通信が妨害されてしまう。軌道図を見ると、地球から見て宇宙機が太陽を横切らないように軌道が調節されていることがわかる。 (リサジュー軌道)


 iPhoneにDSCOVRのサイトを表示してみると、直径が34mmだったので、4m離れて観てみた。
L1のステーションの展望窓から肉眼で地球を眺める地球人という設定で、暗い廊下の先のスクリーンを見つめてみる。
 肉眼で観る月よりやや小さく、かろうじて雲の濃淡や明るい大陸が判別できた。

 天体観測の際、見かけの大きさは視直径で表現される。 予備知識無しの体験に答え合わせをすると、地球から月を観た場合は約0.5°で、 L1から地球を観た場合が約0.45°になる。 再現時の感覚は間違っていなかったようだ。
 最も、地球上でのんびり眺めるのと、数週間宇宙船に滞在し、地球を観測する機会がいくらでもある中で見るのとでは着目点がだいぶ変わるかもしれない。

 EPICの視野についてはサイトに詳しい技術情報がある。
https://epic.gsfc.nasa.gov/about/epic
 L1を巡る軌道の位置によって、地球の視直径は0.45~0.53°の間で変動するため、EPICの視野(FOV)は0.62°で設計されているとのこと。

 探査機の位置やカメラの仕様を探り、人間の視野に当てはめて空間を把握するのは楽しい。
 このへんはVRが普及したらもっと感覚的に体験できるようになっていくだろう。 まだVRリグを持っていないので、いつか試してみたい。 

Popular posts

Arduino Nano Everyを試す

 秋月で売っていたAtmega8と、感光基板でエッチングしたArduino互換ボードを製作してみて、次に本家ボードも買って…  と気が付いたら10年が経過していた。  ハードウェア的な観点では、今は32bitMCUの低価格化、高性能化、低消費電力化が著しい。動作周波数も100MHz超えが当たり前で、30mA程度しか消費しない。  動作電圧範囲が広く、単純な8ビットMCUが不要になることはまだないだろうけど、クラシックなAVRマイコンは値上がりしており、価格競争力は無くなりつつある。 そしてコモディティ化により、公式ボードでは不可能な値付けの安価な互換ボードがたいていの需要を満たすようになってしまった。     Arduino Nano Every https://store.arduino.cc/usa/nano-every https://www.arduino.cc/en/Guide/NANOEvery  そんな中、Arduino本家がリリースした新しいNanoボードの一つ。  他のボード2種はATSAMD21(Cortex-M0+)と無線モジュールを搭載したArduino zero(生産終了済み)ベースのIoT向けボードだが、 Nano EveryはWifi Rev2と同じくAtmega4809を採用していて、安価で5V単電源な8ビットAVRボードだ。  Atmega4809はATmegaと名がついているが、アーキテクチャはXMEGAベースとなり、クラシックAVRとの間にレジスタレベルの互換性は無い。   https://blog.kemushicomputer.com/2018/08/megaavr0.html  もちろん、ArduinoとしてはArduinoAPIのみで記述されたスケッチやライブラリは普通に動作するし、Nano Every用のボードオプションとして、I/Oレジスタ操作についてはAPIでエミュレーションするコンパイルオプション(328Pモード)がある。 公式のMegaAVR0ボードはどれもブートローダーを使わず、オンボードデバッガで直接書き込みを行っている。  ボードを観察してみると、プログラマ・USBCDCとしてATSAMD21が搭載されている(中央の四角いQFNパッケージ)MCU的にはnEDBG

【サボテン】太陽電池の結線

 久しぶりにサボテン計画。 忙しかったり投薬治療直前でだるかったりして、かなり放置していた。 さぼてんも不機嫌そうだ。 せっかくなので、園芸用の水受けに移す。  関節痛で寝込んでる間に、エイプリルフール終わってましたね^^・・・。  太陽電池の展開機構を想像したが、まずは太陽電池の結線を済ませよう。  配線を綺麗にまとめたくていろいろ探していたら、千石電商でぴったりなものを見つけた。 LEDリング基板 というらしい http://www.led-paradise.com/product/629?  本来はチップLEDをリング状にまとめる代物。 イレギュラーな使い道だ。   今度は小径のを買って、GX200のリングライトに仕立て上げよう。   嬉しいことにフレーム径にジャストフィット。 配線を綺麗にまとめられた。   太陽電池の接続部。逆流防止用にショットキーダイオードを入れている。 かなりスッキリ。 蛍光灯下 500ルクスでの実験。 EDLCは10Fを使用。  ちゃんと充電が行われている。 といっても、とてもとてもゆっくりとだけれど・・・。

GPSアンテナをつくる

GPSアンテナを作ってみた。 1575MHzの波長は約19cmなので、半波長で9.5cmとなる。 GHz帯とはいえ、結構長いものだなぁ。 セラミック等の誘電体がなければ、平面アンテナで真面目に半波長アンテナを作ろうとすると手のひらサイズの面積が必要になってしまう。 普通のダイポールだと指向性があるので、交差させてクロスダイポールにする。 屋外地上局のアマチュア衛星用アンテナの設計をそのまま縮小したもの。 水平パターンはややいびつ 92.2mmの真鍮の針金(Φ=0.5mmくらい)を2本用意して、42.3mmで90°に曲げる。 長さの同じ素子同士を並べて配置する。 (全長が半波長より長い素子と短い素子が交差した状態) 片方をアンテナ信号線、もう片方をGNDにつなげば完成。 実際5分くらいでつくったけれど、果たしてどうだろうか。 今回は、道具箱に眠っていた表面実装タイプのMT3339系モジュールに取り付けた。 アンテナはもともと3x1.2mm程度のとても小さいチップアンテナで、 LNAが入っているけど感度が悪かったのでお蔵入りしていた代物。 最近の携帯機器はみなアンテナに厳しい。 さて・・・ クロスダイポール版モジュールをPCでモニタしたウインドウ(左)と、QZ-Rader画面 東側に建物遮蔽があるので、そちら側の衛星はSNが悪い。 とりあえず補足できた衛星数はシミュレーションされたものとほぼおなじだった。 アンテナの角度をいろいろ振って、逆さまにしてもロストすることはなかった。 セラミックのパッチアンテナレベルにはなったかな・・・。 簡単にできてそれなりに測位するけれど、携帯性は皆無になった。 あと、近接周波数の干渉を受けやすいかもしれない。 GPSアンテナのDIY例としては、QFHアンテナもある。 ラジオゾンデなどで使われている例がある。 いつもお世話になっているQFHアンテナ計算シートのサイト https://www.jcoppens.com/ant/qfh/fotos_gps.en.php ヘリカルアンテナは加工精度の難易度が上がるので、今回はクロスダイポールにした。 GNSSとなると、複数の周波数のために調整されているセラミックパッチアンテナが有利だと思う。 セラミックパッチア

ATmega4809(megaAVR0)を試す

megaAVR 0という新しいAVRシリーズを試してみた。  小さいパッケージなのに、UARTが4本もあるのが気になったのがきっかけ。 登場すると噂の Arduino Uno Wifi rev2  にも採用されるらしい。  簡単にデータシートを眺めてみると、アーキテクチャはXmegaシリーズを簡素化し、動作電圧範囲を広げたもののようだ。  CPUの命令セットはAVRxtと新しくなっているが、Xmegaで拡張された一部の命令(DESやUSBで使われる命令)が削除されていて、基本的に今までのATmegaとほぼ同じだ。  コンパイラからは、先に登場した新しいtinyAVR0, tinyAVR1シリーズと共にAVR8Xと呼ばれて区別されている。  CPU周りを見てみると、割り込みレベルなど、今までのクラシックなATmegaで足りないなと思っていたものがかなり強化されていた。 ArduinoAPIを再実装するとしたら便利そうなペリフェラルもだいたい揃っている。 データシート P6  DMAは無いけれど、周辺機能にイベント駆動用の割り込みネットワークが張り巡らされているのがわかる。  できるだけCPUを介在させない使い方がいろいろ提案されているので、アプリケーションノートやマニュアルを読み込むことになる。 ピックアップした特徴 ・データメモリ空間(64kB)に統合されたFlashROMとEEPROM ・RAM 6kB ROM 最大48kB (メモリ空間制限のため) ・デバッグ専用の端子 UPDIを搭載 ・優先度付きの割り込み(NMIと2レベル) ・ピン単位の割り込み(かなり複雑になった) ・リセットコントローラ(ソフトウェアリセット用レジスタが実装され、リセット原因が何だったかもリセット後に読み出せるようになった) ・豊富な16ビットタイマ(4809では5基) ・16ビット リアルタイムカウンタ(RTC) ・豊富な非同期シリアル/同期シリアル(USART 4ch、SPI 1ch,TWI 1ch) ・内蔵クロックは最高20MHz(PLL)と32kHzの2種類。外部クロックは発振器と時計用水晶のみ ・ADCは10bit 16ch ・内蔵VREF電圧が5種類と多い(0.55V,1.1V,1.5V.2.5V.4.3V