2011/11/26

ストラップ模擬衛星 (5x5x5cm)


「人工衛星」というハードの規模は幅広いスペクトルがあり、その規模は無線付きワイヤレスセンサと呼べるものから、遠隔操作の重機までくらいの差がある。

CubeSatは間違いなく前者の領域に入る。それもアマチュア無線技術に基づく、CWなどの人間向きの信号をやり取りする。

ということで、この無線でのやり取りに焦点を当てた模擬衛星キットを作ってみた。できるだけ簡素化したので、電源部含めて5x5x5cmに収まる。

実はCubeSatにも5x5x5cmサイズの計画がちらほらあるようだ。
海外では10センチ角以下で100g以下の衛星はFemtoSatと呼ばれている。

(フェムト: 10のマイナス15乗)

重さでの分類によると、
Mini 10kg~100kg
Nano 1kg~10kg
Pico 100g~1000g
Femto ~100g

(ちなみに、CubeSat規格での0.5Uは10x10x5cm)
宇宙では大きさで発電電力が決まってしまうので、小さいということは積めるものにもいろいろと制限が大きい。




概要
主要部品
FMトランスミッター (新潟精密 NS73M)
ATmega328P 8MHz外部水晶/Arduino用ブートローダー
LM60   温度センサ

検証中
S9706       カラーセンサ(レンズはジャンクの組み込み用WebCamから)
MMA7361 加速度センサ
LTC3105  低電圧MPPC動作DCDCコンバーター
LTC4071  低電圧起動Li-Po/ionチャージャー
太陽電池 SC-3722-9
Li-Poセル 100mAh
スーパーキャパシタ(5V/1.5F~)

基板 UP-204GSR 二枚組のユニバーサル基板
10mmジュラコンスタッド
塩ビのキューブケース(50mm四方) ハンズにて発見。ぴったり。


通信系

この回路の目玉ははNS73M FMステレオトランスミッタ。カーステレオにDAPの音楽を飛ばすためによく使われるもの。

XBeeのようにモジュール同士での遮蔽された通信ではなく、普通のFMラジオを使って直接受信できる。

本当はCWを出してみたいけど、ここでは簡単さを優先してFM(WFM)に絞った。
まだ受信系すら積んでないので、赤外線入力くらいは付けたい。

微弱無線に適合するためアッテネーターを外部に追加している関係で、あまり距離は出せない。それでも実際の衛星が使う電波通信の感覚を模擬できる。

モジュール自体はワイドFMで飛ばしているのだが、無線機のFMモードで聞くと、帯域制限がかかるためそれっぽい音が聞こえる。(飛距離も伸びる)

トランスミッタにAVRで生成したモールスとAFSKパケットを音声入力する。ステレオ入力なのでちょうど1chずつ割り当てている。OPアンプでミキサを作れば、他の音源ソースを入力するなんてこともできる。 音声合成ICや、マイクロホン、音楽プレーヤーのライン出力などなど・・・。

衛星のフォーマットに限らず、センサデータで自由な音が出すことができる。ワイヤレスセンサーシンセと呼んだほうがいいだろう。

信号生成には、Arduino向けのMorseライブラリとSoftModemライブラリを使わせてもらっている。(Bell202規格の復変調ICが入手しづらい今日この頃)



ありあわせの部品で簡単に作れるのだが、まだ問題が山積み。
・電源管理
 FMトランスミッタが起動した時点で、回路の消費電流は3.3V、40mAとなる。ピーク132mWの収支をとるのが結構難しい。
テレメトリ送信頻度は数十秒に一度へ減らし、平均消費電力を発電量以下に持っていく必要がある。 
大容量EDLCでの初期充電時間の壁をなんとかしたい。

・太陽電池の選定
おあつらえ向きの太陽電池があまり無いという罠がある。PowerFilmの最小サイズでも縦幅がオーバーする。 動かすときは、素直に外部にパドルを広げたほうがいいだろう。

衛星は超絶技術の塊ではなく、枯れた技術の故障回避設計の塊。そう。プロトタイピングの先には長い長い検証が待っているのです。

関係ないけど、ニトリのバナナハンガーはヘッドホン吊るせたりして色々と便利ですね。