非実在宇宙機ライブラリ 約3回目。
今回は可視光通信を実証する衛星を考えてみた。
以下設定集。
<非実在仕様>
キューブサットタイプで、高輝度LEDアレイを積んだ衛星を想定する。 衛星バス、ミッション部、LED白光面という3つのセクションに分けてみた。 対角の金属ロッドは無線アンテナ。
展開はバネを利用した展開機構で、真ん中のミッション部が辺に近い軸から180度外側に展開する仕組み。 バスとLEDは同一軸で固定されている。
20センチ四方なので、電力収支、熱構造、内部空間的にかなりカツカツだろう。
LEDアレイは放熱機構を考えて、携帯用ルーペみたいにスライドする方式がひとつ、
ミッション部がLEDアレイと同一平面にセンサも露出できて便利そう という苦し紛れの利点がひとつ。
実際には2つのブロック([衛星バス+ミッション]と[LEDアレイ])で十分だとおもうので、搭載機器の温度管理を考えたら、やたら展開するのはあまりよろしく無さそう。
今まで打上げられた小型衛星も、構造が複雑なものは機構展開に失敗しやすい(あたりまえといったらあたりまえか・・・)があるので、できるだけ可動部を減らすか、複雑な展開機構を捨てることが必要だ。
後ろから。 無線は地上からのアップリンクとダウンリンク用。 LEDはまだおまけなので。
ミッション部と独立の汎用衛星バスが、衛星を管理する。
軌道-地上間可視光通信には地上局とのタイミングも関係するだろうから、結局別な通信手段は必要になる。 全部光ってすると、天候が悪かったらだめだね。
姿勢制御は磁気トルカ程度のみ。 リアクションホイールは50x50センチの衛星までしか採用されていない模様。
<LEDによる可視光ダウンリンク>
小型衛星のコンセプトとしては、打ち上げるリソースは最小限に、地上側でできることは地上でとあるので、衛星機能が正常であれば、 まず人力で可視光ビーコンとして確認できるか確かめ、地上局設備によっては高速ダウンリンクフェーズに移行 といったステップを踏む。
高速と行っても、どの程度できるかは未検証。 「きらり」(OICETS)とNICTが行ったレーザー光による実証実験がある。(プレスリリース)
地上側で超高精度追尾と光学的補償、大気ゆらぎを考慮した通信冗長等、容易とは言いがたい技術が必要そうで、この非実在衛星には計画的にオーバースペックである。
太陽電池、フォトトランジスタといった受光素子で変調可視光を増幅し、ゆらぎ等で鈍った波形を復調するといったことが思い浮かぶけれど・・・ どのくらいの帯域が上限なのだろう
光害もあるし、蛍光灯みたいな発振光に満ちあふれた空だから、どれほどの信頼性があるのか不明。
<情報量>
1bpsのビーコン通信なら、最大高度で5分程度のパス時間がとれたと想定すると、300ビット(37バイト…)の情報が得られることになる。
8秒が一バイトにあたる。 ところどころ、(このビットがどの列に当たるのか)を知らせるためのフレームバイトを挟むので、実際に降りてくるデータはもうちょっと少なくなる。
ビデオカメラ(天文用)と望遠鏡で追尾した場合、シャッタースピードを固定で考えると、30FPSで受光できたら、 半分かそれいかの10bpsは撮れると仮定して、3000ビット(375バイト)は得られるのだろうか?
どちらにしろ、無線なら0.5秒~1秒で取得できるデータ量しかない。お手軽にやろうとしたらアマチュア無線よりも帯域が少ないということになる。
目で見えるという特性を考えると、だれでも受信できて、カメラがあればデコードできるかもしれない衛星通信という意味で、広報的な役割を与えることもできる。(あるいは迷惑を)
もうちょっと点滅速度を落とし、全天を長時間露光できる魚眼カメラでパス時間を捉えると、モールス符号の航跡がイメージとして得られるかもしれない。
肉眼で見える小型衛星という実感を得る。 >モチベーションアップ!
運用終了後、停波しても衛星として機能していれば、可視光ビーコンで軌道上からデータを下ろせるかもしれない。 軌道センサとしての役割は十分考えられる。 (天体写真家から怒られそうだけど)
国際可視光通信協定とかできるのだろうな・・・
誰でも見えた衛星といえば、初期宇宙開発でアメリカが開発した軌道バルーン、エコー1号がある。
30~40メートルの反射性塗装された風船で、地上からの電波を跳ね返すだけの受動的衛星だった。 中継機能を持った衛星が打上げられるまでの僅かな期間、反射衛星通信に用いられた。
太陽光を反射してよく見えたという。
大きくてよければ、反射光を制御して液晶シャッターで地上にデータ送れないかなー。 エコ一号(笑
<向きを変えて>
もちろん、大気の無い宇宙空間・・・ 衛星同士の通信だったらどうだろう。 大気がなければとても理想的な通信ができるのでは?
こちらはネタじゃなく、真面目な研究がすすめられているようで、
高軌道の親衛星、低軌道のセンサ衛星群という計画がある。 低軌道衛星に期待される観測の時間分解能向上と、データ帯域幅、二つのニーズを解決できるシステムとなる。
こう書いていて、レーザーポインターで雪降る夜に軌跡を投影して喜び、LEDに音声変調かけて遊んでいた頃を思い出した・・・。